トランプ弾劾裁判、弁護団が展開する8つのトンデモ反論
TRUMP’S CRAZY DEFENSES
トンデモ度5位「最高裁長官の不在」
連邦最高裁長官のジョン・ロバーツは自ら、今度の弾劾裁判を仕切る役割を辞退した。トランプ弁護団は、これが被告人の「法的に適正な手続き」を受ける権利を侵害していると主張する。確かに、憲法には大統領の弾劾裁判に当たっては連邦最高裁の長官が裁判長を務めると明記されている。弁護団はこれを根拠に、下院は自らに有利な判決を引き出すためロバーツを遠ざけ、上院最古参のパトリック・リーヒー議員を裁判長に据えたと非難している。
だが下院がロバーツに辞退を働き掛けた証拠はなく、代理で裁判長を務めるリーヒーが法的な義務を果たさないと信ずるに足る証拠もない。そして憲法は上院に「全ての弾劾案件を仕切る権限」があると規定しているし、最高裁も以前に、上院には司法の介入を受けずに弾劾裁判のルールを決める権利があるとの判断を全員一致で下している。
トンデモ度4位「下院による訴状の不備」
トランプ弁護団は、検察官役の下院議員らが1月6日の反乱扇動を「選挙結果を覆そうとする活動」の一環と捉えていることを理由に、この告発は曖昧だと論じている。つまり「弾劾に相当するとされる多くの行為を一つにまとめている点で憲法違反」だと言う。
この主張にはいくらでも反論できる。そもそも、弾劾裁判を仕切る全ての権限が上院にあるのと同様、下院には「大統領を弾劾訴追する唯一無二の権限」がある。つまり、どんな罪でも弾劾訴追できるのだ。
そもそも、トランプは確かに多くの悪事を働いたが、その全てを下院が細かく告発していないという議論は説得力に乏しい。投票日の晩に一方的な勝利宣言をして以降の、公正な選挙結果を覆そうとした行為の全ては正当性を欠く。
「当時の彼の行動はどれも弾劾に値する。他人を扇動したか否かの問題ではない」。選挙後の日々におけるトランプの行動を、ボーマンはそう切り捨てる。「どこにも不正などない選挙結果を覆すために、憲法に反する行為をさせようとした」のだから、弁護のしようもない。
トンデモ度3位「下院による弾劾発議は不当だ」
2度目の弾劾を急ぐあまり、民主党主導の下院は正規の手続きを無視したとする主張だ。通常なら行われる委員会や公聴会を経ていないから、下院による弾劾決議は違法ということだ。
トランプ側は言う。「政府がこれほどまでに急いで行動することを許すような伝統的理由は存在しない。下院が弾劾手続きを急ぎ、委員会その他による調査も経ず、被告人に直接または弁護士を通じた『弁論の機会』を与えない理由はなかった。......この国、とりわけ連邦議会において、司法の手続きに政治的憎悪が介入する場所はない」
この主張は、当時の下院議員たちが政府転覆の現実的な試みに対応しなければならなかった事態を無視している。あのときは議会も議員も命を奪われかねない状況で、だからこそ1万人以上の州兵が議事堂周辺に動員されたのだった。トランプが政府を転覆させる試みを続け、トランプの手先がさらなる攻撃を企てているかもしれないという、証拠に基づく懸念もあった。
その後のトランプは、平和的な政権移行を妨げる攻撃をやめた。たぶん、このまま行くとまた弾劾されると気付いたからだ。