SNSは大統領を「検閲」していい
MEDIA CAN CANCEL TRUMP
トランプのツイッターアカウントには「凍結中」との表示が JOSHUA ROBERTS-REUTERS
<ツイッター、フェイスブック、アマゾン。ほかにEC企業などもトランプ一派を排除する動きに出ている。テック企業の情報監視能力が議論の対象になる日はいずれやって来るが、今はその時ではない>
ツイッターがトランプ米大統領の個人アカウントを永久停止し、フェイスブックも無期限凍結した。アップルとグーグルはそれぞれ、米連邦議会議事堂を襲撃した暴徒たちのたまり場と化していたSNS「パーラー」をアプリストアから削除した。
とはいえパーラーにとって最も大きな打撃は、アマゾンの決定かもしれない。同社がクラウド基盤の提供を停止したため、パーラーは接続不可能になってしまった。
昨年の米大統領選でのトランプの敗北、共和党の上院多数派からの転落、そして嘘をばらまき暴力をあおる場だったプラットフォームの喪失── 今や「トランプ・ワールド」、あるいはその残党は、自動的に自己愛まみれの自己憐憫モードに転換している。テクノロジー企業による検閲は許せないと、彼らは声を震わせて非難する。
議事堂襲撃を扇動した1人、共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は自著の出版が中止されたことを受けて、「(言論の自由などを保障する)合衆国憲法修正第1条への直接攻撃」だと批判した。だがエール大学法科大学院出身のホーリーなら、心得ておくべきだった。修正第1条が禁じているのは政府による検閲だけだ、と。
今回、アカウント停止などを決めたのはどれも民間企業だ。顧客に何を提供して、何を提供しないか、企業側が判断するのは極めて当然。リベラル派の筆者が、保守派のFOXニュースにレギュラー番組を持たせてほしいと要求して、断られたら? 企業判断だから、それは仕方ない。
巨大テクノロジー企業の情報フロー監視能力は、いずれ周到な議論の対象になるだろう。だが、今はその時ではない。
選挙プロセスが暴力で破壊されかかったばかりの今、アメリカの民主主義は危機に瀕している。これは国家的緊急事態であり、緊急措置が求められている。だからこそ、テクノロジー大手以外もトランプ一派を排除する動きに出ている。
医療保険会社が構成するブルークロス・ブルーシールド協会やホテルチェーンのマリオット・インターナショナルは、米大統領選の結果を覆そうとした共和党議員への献金を無期限停止すると発表。オンライン決済サービス企業のストライプ、EC(電子商取引)システムを提供するショッピファイなどは、トランプ陣営やトランプ個人のブランドとの取引を停止した。
企業側には、議事堂襲撃事件への嫌悪に加え、ビジネス上の動機もある。アメリカのチェックアンドバランス(権力の抑制と均衡)制度や平和的な政権交代は、企業の利益になってきた。トランプ支持者が解き放った混乱は米経済、ひいては米企業を害すると、経営者らは理解している。