未曽有の危機で船出のバイデン政権 傷ついた「アメリカの魂」を再生できるか
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ジョー・バイデン氏は大統領選の間、「米国の魂」のために戦うと約束してきた。写真はホワイトハウスで閣僚の宣誓式に出席したバイデン氏(2021年 ロイター/Tom Brenner)
ジョー・バイデン氏は大統領選の間、「米国の魂」のために戦うと約束してきた。そして20日に第46代大統領に正式就任した今、ずたずたに打ちのめされたその魂をよみがえらせるという極めて困難な任務に、いよいよ正面から向き合うことになる。
歴代の大統領で、これほど厳しい環境での船出を迎えた人物はほとんど思いつかない。新型コロナウイルスのパンデミックがなお多くの生命を奪い、人々の生活を台無しにしているだけでなく、武装蜂起の恐れがくすぶり、トランプ前大統領は6日の連邦議会議事堂占拠事件を扇動したとして、これから上院で弾劾裁判に臨む。
選挙で不正があったというトランプ氏による根拠のない主張をまだ何百万人もの有権者が信じて疑わず、議会では勢力が伯仲する与野党が何らかの歩み寄りをしない限り、物事は決まりそうにない。こんな深刻な分断が起きている状況で、バイデン氏は米国を統治していかなければならない。
そこで自分が国家を団結させ、さまざまな政策を実行できると大見得を切ったバイデン氏は、実際に結果を示すことを強く迫られている。それも素早くだ。
長らく民主党ストラテジストを務めるジョー・トリッピ氏は「バイデン氏は新型コロナウイルスワクチン配布に注力し続け、(国民全体に届けるための)『最後の1マイル問題』を解決しなければならない。失敗や他に気をそらすことは許されない」と述べた。
バイデン氏は、議会が迅速に動いてほしいと考えている。政権チームが信じているのは、単に言うだけでなくきちんと結果を出すことが、政治的緊張を和らげる一番の方法だということだ。特にバイデン氏が経済の安定や学校再開、ワクチン普及に向けた第一歩として提案した1兆9000億ドル規模の追加経済対策の可決が求められている。
あるバイデン氏の顧問は、国民は政府が機能して政策を実行してほしいと望んでおり、トランプ支持者の多くもパンデミックで傷ついたと付け加えた。別の顧問は「暗闇から脱出する道はある。だがわれわれは議会の支援が必要だ」と訴えた。
ライス大学で大統領史を研究するダグラス・ブリンクリー氏は、バイデン氏の就任時の状況について、南北戦争勃発直前で暗殺の脅威にも直面していた1861年のリンカーン大統領になぞらえた。ブリンクリー氏は「当時は暴力のにおいがぷんぷんしていた」と語り、もちろん現在はそこまで危機的ではないとも認めた。