米上院選、ジョージア州の民主党勝利でバイデン次期政権が手にした恩恵
(左から)勝利を決めたオソフ、ワーノックとバイデン JONATHAN ERNST-REUTERS
<上院で多数派の座を奪還し、立法と行政の両方を手にした民主党だが、忘れてはいけないオバマ時代の教訓も>
1月5日にジョージア州で行われた2つの連邦上院議員選挙の決選投票で、民主党の新人ラファエル・ワーノック(51)とジョン・オソフ(33)が、それぞれ共和党の現職を破って当選した。
黒人牧師のワーノックと、ユダヤ系ジャーナリストのオソフが南部のジョージアで上院議員に選ばれたことは、それだけで歴史的快挙だ。だが民主党には、ほかにも喜ぶべき大きな理由があった。
この2議席により、民主党は上院で多数派の座を奪還したのだ。2015年から上院を支配してきた共和党は、昨年11月の一部改選で、100議席中50議席を維持。民主党は48議席となっていた。
つまりジョージアで1勝でもすれば、共和党は上院で過半数を維持できた。だが、2議席とも民主党に奪われ、少数派に転落した。なぜなら、採決が同数の50対50に割れた場合は、上院議長を務める副大統領が1票を投じるルールがあるからだ。そして1月20日にジョー・バイデン大統領が就任すれば、その均衡を破るのは民主党の副大統領カマラ・ハリスになる。
しかも上院で多数派になれば、民主党は既に過半数を握る下院と、バイデンの大統領府も合わせて、立法と行政の両方を手に入れることになる。
この事実にとりわけ喜んでいるのが民主党左派だ。「進歩主義が重視する争点の全てにおいて可能性が広がる」と、草の根政治団体の「進歩主義改革運動委員会(PCCC)」の共同創設者であるステファニー・テイラーは語る。
多数派といっても、共和党との議席差は上下院ともごくわずか。このため民主党指導部は、党内を一致させてバイデン政権の運営を助けるためにも、進歩主義のアジェンダにもっと歩み寄るのではないかと、左派は期待している。
だが、そう簡単にはいかないだろうと、バージニア大学のジェニファー・ローレス教授(政治学)は語る。党指導部は、左派の支持を取り付ける一方で、党全体が左に傾き過ぎないよう注意する必要があるというのだ。
民主党には、2010年中間選挙の苦い経験がある。有権者は莫大なコストがかかるオバマケア(医療保険制度改革)や大企業救済など、オバマ政権の左寄りの政策に反発。民主党はそれまで支配していた上下両院で大敗を喫し、下院では野党に転落した。
2022年の中間選挙で「同じ轍を踏まないことが、(民主党の)最重要課題となるだろう」と、ローレスは指摘する。