最新記事

中国

ほぼ「無理心中」計画:香港民主派前議員大量逮捕の背景

2021年1月7日(木)18時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●第七歩(2021年11月):立法会が再度、財政予算案を否決し、香港行政長官は辞任し、香港政府は閉鎖する。

●第八歩(2021年12月):全人代常務委員会が「香港が緊急事態に突入した」と宣言して、中国の国家安全法を直接香港に適用し、香港立法会を解散して、臨時立法会を設立させる。次期香港行政長官は選挙によってではなく協議によって選び、民主派のリーダーを一気に大量逮捕する。

●第九歩(2021年12月以降):香港社会におけるデモはさらに激烈になり、鎮圧の仕方もより残虐になる。香港人がストライキに突入し、香港社会は機能を失う。

●第十歩(2022年1月以降):西側諸国が中国共産党に対して政治的ならびに経済的制裁を行う。

なお、この第十歩に至った段階では、われわれは「中国共産党とともに崖から飛び降りる」覚悟が出来ており、その後何が起きるかは明示することはできないが、香港の域を既に出ているので、国際社会に任せるしかない。

以上が「死なばもろとも十歩」計画の概要である。

これは「死なばもろとも十部曲」とも書かれており、統一されていなくて名称にも混乱が見られる。政府当局は「十部曲」の方を用いている。

香港政府の言い分

これに対して香港警務処国家安全局の李家超局長は概ね以下のようなことを述べた。

──容疑者たちは陰険で悪辣な計画を立て、特別区政府を麻痺状態に陥れようとしている。彼らは「死なばもろとも十部曲」計画に基づき、「35+」の議席を獲得し、彼らが勝手に決めた予備選挙に基づいて特区政府の財政予算案を否決し、特区政府の機能を麻痺させ、政府機能を破滅に追いやることを狙っている。終局的には香港全体をデモで攪乱し、共に崖から飛び降りる長期的計画を目論んでいる。それは香港の死を意味し、香港が再び立ち上がることは困難になるだろう。それを座視するわけにはいかない。したがって国家転覆罪で逮捕した。

民主の先に何があるのか?──「一国二制度」は2047年まで

1997年7月1日から実施されている「中華人民共和国・香港特別行政区・基本法」は、2047年7月1日を以て施行期間を終わる。

基本法では「一国二制度」(「一つの中国」の下で、「大陸:社会主義制度」で「香港:資本主義制度」)に基づいて香港に高度の自治を認めるとしながらも、この「一国二制度」は2047年6月30日24:00時を以て終了するとしているのである。次の一秒、7月1日0:00時から、中華人民共和国の一般の「都市」同様になり、香港には「資本主義制度」は無くなり、香港も「社会主義国家」になる。

その瞬間まで「民主と自由」を仮に手にすることができたとしても、中英間で結ばれた条約に違反することはできないだろう。これは国連にも届けられている国際間の契約だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

都区部コアCPI、1月は+2.5%に伸び拡大 食料

ビジネス

失業率12月は2.4%に改善、就業者増加 求人倍率

ビジネス

日経平均は小幅続伸で寄り付く、米株高を好感 ハイテ

ビジネス

米ビザ10─12月期、利益が予想上回る 年末消費が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中