ほぼ「無理心中」計画:香港民主派前議員大量逮捕の背景
だとすれば、香港の民主活動家たちは、この「2047年6月30日24:00時」という瞬間まで維持できるかもしれない「自由と民主」のために命を懸け、香港を崩壊させても良いと思っているのだろうか?
何よりも、次の瞬間に「自由と民主」を放棄することになるということを自覚して突き進んでいるのだろうか?
但し、この運命を変える方法は一つだけある。
それは中国共産党が支配している「中華人民共和国」という国家を崩壊させることである。それ以外に手はない。
「死なばもろとも十歩」の第十歩では、「あとは国際社会に頼るしかない」と国際社会の支援に最後の望みをかけており、しかし、果たして国際社会がどう出るかは分からないとも嘆いている。
たしかに──。
アメリカは今日、トランプ支持者が議事堂に乱入して死者を出すという、民主主義の砦ではあり得ないような事態が起きている。次期バイデン政権の国務長官(指名者)は一応、「民主を踏みにじることは許さない」と香港政府への抗議を表明しているが、しかしアメリカの民主主義は既に地に落ちた。
日本に至っては、政府与党がこの期に及んでもなお「習近平国家主席の国賓来日」を中止したとは言っていないという「親中」ぶりだ。中国がより強力な力を持ち得る方向にしか、日本は動いてないのである。
日本という国家は天安門事件の時もそうだったが、常に中国共産党の一党支配体制を強固に維持させる方向にしか動いていない。それでいて「香港の事態を憂慮する」などと、白々しいことを言っても、如何なる説得力もない。
基本法の第23条には香港が独自の国安法を持つことが謳われているのだから、本気で香港の民主を応援する気があるのなら、基本法を管理している中国政府、すなわち一党支配体制を崩壊させる以外に選択はないのではないだろうか。
それにしても「民主」を思うと、辛くなる。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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