最新記事

中国

ほぼ「無理心中」計画:香港民主派前議員大量逮捕の背景

2021年1月7日(木)18時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

TYRONE SIU-REUTERS

6日、香港立法会の民主派前議員や区議会議員など約50人が逮捕された。背景には民主派の「死なばもろとも十歩」計画がある。十歩目は中共とともに崖から飛び降りる際の国際社会支援頼み。現状では望み薄か。 

逮捕された人たちの経緯

1月6日に民主派系列の全立法会(香港議会)議員や区議会議員など50人超が逮捕されたが、この人たちは、2020年9月に予定されていた立法会議員選挙に向け、民主派の候補を絞り込むために実施された予備選挙(中国語で初選)に参加した政治家たちだ。

この予備選挙は昨年7月に行われたもので、民主派の前議員たちは、立法会の過半数を占めることで香港政府の予算案を否決し、香港政府トップの行政長官を辞任に追い込むことなどを目標に掲げていた。

昨年7月12日、香港の民主派は立法会議員選(定数70)に向けて同日まで2日間にわたり実施した予備選の投票者が、初期目標の17万人を上回って約61万人に達したと発表。

立法会選挙は、有権者全員が投票できる直接選挙枠(定数35)と、金融や商工業など業界団体の関係者らに投票権がある職能選挙枠(同35)に分かれる。ところが民主派には非常に多くの政党や政治団体があり、互いが相殺し合って、結果的に当選者を減らしてしまう。

言うならば日本の野党と同じで、多少の党議の違いは譲歩して大きな野党を作れば良いものを、わずかな「理念」の違いで小さな政党に細かく分かれているために、政権与党に永遠に勝てない。この論理と同じだ。

そこで香港の予備選挙は直接選挙枠で民主派候補の乱立を防ぐことが目的だった。

それに対して香港政府側は、香港政府には予備選制度はないので、予備選挙そのものが国家安全維持法(国安法)に違反すると非難したが、61万もの人が投票したことにより、これは「香港人が自由と民主を諦めていないことを世界中に示した証拠だ」と民主派は誇った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中