イギリスでアストラゼネカ製ワクチンの接種が始まったのに、アメリカが遅れている理由
UK Distributes First AstraZeneca Vaccines: When Will The US Follow Suit?
アストラゼネカとオックスフォード大学共同開発のワクチン接種を受けた高齢者(1月4日、英オックスフォード) Steve Parsons/REUTERS
<温度管理も容易で価格も安く、ワクチン普及の期待がかかるアストラゼネカ製ワクチンにアメリカが抱く疑問とは>
イングランド全土で3度目のロックダウンが宣言されたのと同じ1月4日、イギリスでは英製薬大手アストラゼネカがオックスフォード大学と共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。イギリス政府はこれを、パンデミックとの戦いにおける「重要な転換点」になると大きな期待を寄せている。だがアメリカでこのワクチンが使えるようになるのは、4月になるかもしれないという。なぜこんなに差が出るのか。
アメリカは早くて4月?
イギリスの国民保健サービス(NHS)は、アストラゼネカ製ワクチンを一般向けに供給する世界初の保健機関だ。82歳の透析患者ブライアン・ピンカーが、アストラゼネカ製ワクチンの接種を受ける最初の人物となった。「これは、この恐るべきウイルスとの戦いにおける重要な転換点だ」と、イギリスのマット・ハンコック保健相は述べた。「すべての人々に対して、パンデミックの終わりという新たな希望を与えられることを期待している」
イギリス政府はこのアストラゼネカ製ワクチンについて、1億回分以上の接種が可能な契約を結んだと発表している。イギリスでは昨年12月、既に米ファイザー製ワクチンの摂取を開始しているが、マイナス70度以下の特別な温度管理が必要なファイザー製と違い、アストラゼネカ製は冷蔵庫でも保管できて価格も安いため、普及への期待がかかっている。
だが、アメリカ国民がこのワクチンの接種を受けられるまでには、まだ時間がかかりそうだ。新型ウイルスワクチン開発・供給の加速を目的としたアメリカ政府の「ワープ・スピード作戦」を率いるモンセフ・スラウイ主席顧問は12月30日、アストラゼネカ製ワクチンの認可は少なくとも4月まで先送りする見込みだと発言した。このワクチンの効き目に対して懸念が残っているのが理由だという。
「率直に言って、最大の疑問は高齢者への有効性だ」と、スラウイは政治誌ザ・ヒルに語った。「この点はさらなる裏付けが必要だ。臨床試験では十分な数の(高齢の)被験者が採用されていなかったからだ」
アストラゼネカ製ワクチンは、すでにアメリカで供給が始まっているファイザーやモデルナ社製のワクチンは、RNAを使って免疫反応を引き起こすタンパク質を作るよう体に促すのに対し、アストラゼネカ製ワクチンは、弱毒化あるいは不活性化されたウイルス株を用いて、体の防御機能を起動させる仕組みだ。アストラゼネカ製ワクチンはデータ上、ファイザーやモデルナのワクチンと比べて有効性が低いのも確かだ。