日韓関係の修復に意欲を見せるバイデン その仲介に必要な4つの心得
慰安婦・徴用工問題に、バイデンは解決策を見いだせるか JOSHUA ROBERTS-REUTERS
<従軍慰安婦・徴用工など未解決の歴史問題で、被害者を差し置き、国家の利益を優先してきた日韓両国。和解を進めるため、アメリカに貢献できる点があるとすれば......>
北東アジアでの同盟の立て直しは、バイデン次期米大統領にとって困難な課題になりそうだ。なにしろ、根深い歴史問題をめぐって日韓関係が悪化している。
バイデンは、同盟国である日韓の関係修復に貢献する気満々のようだ。だが従前の賠償条約・協定が抱える根本的な欠陥、すなわち被害者ではなく国益を優先する道は回避しなければならない。
アメリカは冷戦中の1965年、アジアの同盟国を団結させるべく、日韓基本条約の締結を促した。この条約をもって、戦後補償に関する問題は全て解決済みだというのが日本政府の立場だ。
しかし、同条約は従軍慰安婦・徴用工問題の被害者に対する補償として正当ではなかった。これらの問題は、まだ表面化していなかったからだ。
さらに当時の韓国大統領、朴正煕は日本の支援を目当てに条約締結を強行し、手にした金額は被害者補償ではなく経済発展の資金に使われた。要するに、日韓基本条約は経済・安全保障・政治上の思惑を最優先していた。
2015年には慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認する日韓合意が結ばれた。中国の経済的圧力と北朝鮮の核実験を受け、韓国が対日融和を急いだ時期だ。
対中・対北朝鮮共同戦線を必須としたアメリカは、日韓の話し合いを仲介。両国は2016年、北朝鮮に関する情報共有などを目的とする秘密情報保護協定(GSOMIA)の締結にこぎ着けた。つまり日韓合意は日韓基本条約と同様、国家の都合によるものだった。
最近の対立は2018年、韓国大法院(最高裁判所)が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決がきっかけだ。貿易紛争が勃発し、いら立った韓国はGSOMIAの破棄をちらつかせた。未解決の歴史問題が貿易・安全保障面での日米韓の協力体制を損なう可能性を、日韓の報復合戦は証明している。
和解を推し進めるには、被害者を中心に据える必要がある。優先すべきは、精神面を含めて関係者の損失の修復を図ること。日韓が歴史と真正面から向き合えば、戦略的利益も達成しやすくなるはずだ。
もちろん、特に両国政府が問題を政治化したがっているとあって実現は難しい。それでも、アメリカの仲介が役立つ可能性はある。
第1に、米政府は新たな日韓の和解協定を仲介すべきだ。これは、存命中の元慰安婦や元徴用工との協議に基づくものでなければならない。
第2に、アメリカが第三者の立場で条約遵守を保証しては、という声がある。今後の米政権は、違反した側への外交・経済的圧力をためらってはならない。これによって、非協力的な態度や前言撤回は、する側にとってコストの高い行為になる。