サルの社会から学ぶ、他者との向き合い方
人間とゴリラの最大に違いは、「言葉を話すかどうか」だ。人間同士のコミュニケーションでは、言葉が重視される。そのため、言葉のすれ違いで誤解が生まれてしまうこともある。一方でゴリラは、視線、表情、しぐさ、発声などでコミュニケーションをとる。自分の正直な気持ちを相手に伝えることは、言葉を持つ人間相手の方がかえって難しいのではないかと黒鳥氏は思うことがあるという。
人間同士のコミュニケーションはときに複雑で、わかりづらい。言葉があるから、問題を後回しすることもできるし、問題を回避することもできる。しかし、言葉がないゴリラは、その瞬間がすべてなのだ。常に真摯にゴリラに向き合い、解決していかなければならない。そうしないとゴリラから信頼してもらえないのである。そのことを黒鳥氏は次のように言っている。
言葉がないから、向き合います。
言葉がないから、ごまかしが利かないのです。(116ページ)
ゴリラは繊細な心を持っている。だからこそ、誠実に向き合えば、互いに気持ちを通じ合わせることができるのだという。
友だち、同僚、親子、恋人、夫婦――さまざまな人間関係に行き詰まりを感じたとき、類人猿たちの愛情物語がヒントをくれるかもしれない。言葉がないからこそ、まっすぐ素直に伝わるコミュニケーションがそこにはあるのだ。
『恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた』
黒鳥英俊 著
CCCメディアハウス
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