最新記事

通信傍受

中国、アメリカ人数万人の通信を「大量監視」か

China Used 'Mass Surveillance' on Thousands of Americans' Phones, Report Claims

2020年12月16日(水)16時20分
ジェイソン・マードック

中国は携帯電話の国際的なネットワークの弱点を利用した?(写真はイメージ) /Mike Segar-REUTERS

<長年知られていながら放置されてきた国際通信網の弱点SS7を利用し、アメリカ人数万人の通信を監視している、と専門家が中国政府を告発した>

中国は、カリブ海諸国の携帯電話ネットワークを悪用して膨大な数のアメリカ人を監視している、とモバイルセキュリティの専門家が非難した。

中国の悪事を暴いたと主張するのは、カリフォルニア州に拠点を置くデータ分析会社モバイリウムのネットワークセキュリティ担当副社長だったゲイリー・ミラー。英ガーディアン紙に、世界的な通信システムの「数十年来の脆弱性」を利用したスパイ活動の証拠を収集したと語った。

記事には明記されていないが、ミラーが問題視しているのは、世界各国の加入電話網を制御するために用いられるプロトコル(通信規約)の共通線信号No.7 (SS7)だ。このプロトコルに固有のセキュリティ上の弱点があることは、かなり前から知られている。

カリブ海諸国からの「信号データ」を分析することによって、ミラーは中国が国営の中国聯合通信(チャイナユニコム)を利用して「アメリカの電話加入者の通信に狙いを定め、追跡、傍受」していたことを発見した、とガーディアン紙は報じた。

中国は旅行中のアメリカ人を監視するためにカリブ海の通信事業者を不法に利用したように思われる、とミラーは語り、2018年から20年の間に、何万人ものアメリカ人の携帯電話による通信が不法に傍受された可能性が高いと主張した。

カリブ海旅行中に狙われる

「監視する相手が数万人のレベルに達すると、これはもう大量監視といえる」とミラーは語り、この戦術は「情報収集が主な目的であり、必ずしも要人を標的にしているわけではない」と述べた。「中国が特に関心を抱いている地域があるのかもしれないし、監視は対象となる人々がアメリカ国外に滞在している間に行われているのかもしれない」と続けた。

ミラーが設立したメディア制作会社エキシジェント・メディアは同社のウェブサイトで、中国の脅威についての報告書「ファー・フロム・ホーム」の最新版を229ドルで販売している。

同社は2018~19年に関しても同じタイトルで報告書を出しており、SS7を利用した同様のスパイ活動の数々を報告し、中国はカリブ海諸国の携帯電話網を通じて18年に「大規模な監視」攻撃を行ったと主張した。

この報告書は、SS7はネットワークを相互につなぐシステムであり、「世界中のネットワーク事業者の国際ローミングサービスを可能にする」と説明。そこには利用者を特定できる痕跡が残り、追跡や監視に悪用される危険がある、と警告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平案、ロシアは現実的なものなら検討=外

ワールド

ポーランドの新米基地、核の危険性高める=ロシア外務

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想

ワールド

印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中