広大な土地の米農村部、ワクチン接種に課題 最大の問題はドライアイスの確保
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米国の農村部などの公衆衛生当局者が、数千マイルにも広がる地域に点在して居住する人々への新型コロナウイルスワクチン接種準備に頭を痛めている。写真は4日、ウィスコンシン州ベロイトのドライアイス生産工場で撮影(2020年 ロイター/Nicholas Pfosi)
米国の農村部などの公衆衛生当局者が、数千マイルにも広がる地域に点在して居住する人々への新型コロナウイルスワクチン接種準備に頭を痛めている。そうした州民に対し、接種にアクセスしてもらうだけでも米史上で最も難しい作業になる可能性があるだけではない。北極よりも低い温度で保管しなければならない米ファイザーのワクチンがだめにならないように、十分なドライアイスを確保するという、もう1つの難題に直面しているからだ。
ファイザーがドイツのビオンテックと共同開発したワクチンは、マイナス70度で輸送・保管しなければならず、特殊な超低温冷凍容器、もしくはドライアイスを必要とする。
ワシントン州、ニューメキシコ州、ミシシッピ州、ルイジアナ州、インディアナ州など十数州はロイターに対し、急いでドライアイスを確保しようとしていると答えた。ファイザー側から届くスーツケースの大きさの出荷容器に充填(じゅうてん)するためだ。
ファイザーによると、この容器が接種拠点で臨時保管庫として使われる場合、容器をひとたび開けた後は、5日間ごとにドライアイスを補充すれば全体で30日間、ワクチンを維持できる。同社は、全米50州において必要な分を満たせるだけの十分なドライアイスは供給され、深刻なドライアイス不足にはならないとの見方を示す。
しかし、予防接種アクション連合(IAC)の幹部で、ファイザーのコロナワクチン計画に対するアドバイザーであるケリー・ムーア医師によれば、これはかつてない難度の接種計画で「農村部や遠隔地の共同体では、特に複雑な取り組みになる」という。
米国でのコロナ流行は、初期のころは北東部などの人口密集地域に集中していた。しかし、今は全米に流行が広がり、人手や財源などが限られる小さな町や農村部がとりわけひどく打撃を被っている。農村部の人口は約6000万人と全米の5分の1に満たない。
間もなくモデルナのワクチンも承認される可能性がある。こちらは普通の冷凍装置で保管できる。テキサス州やアーカンソー州などの当局者は、州内の農村部ではモデルナのワクチンを主に念頭に置いている。
しかし、多くの州や病院の幹部はファイザーのワクチン供給を受ける計画で、これに関わる輸送や配置などの面で懸念を表明している。
ファイザーの場合、ワクチンを送る最小数量は1000回分弱で、ピザが入る箱ほどの大きさの容器にドライアイスをいっぱいに詰めると、これで5日間持たせることができる。
しかし、国内数千の病院や医療機関の購買を調整するプレミア社の幹部、ソーミ・サハ氏は、ワクチンを農村部に届けるためには、この5日間分で配布や接種に間に合うか疑問を呈する。「(人手が回らなかったり、接種希望者が十分に集まらなかったりすれば)ワクチンは無駄になると言われているようだ。こうした過疎地では、この問題のために人々がワクチンにアクセスさえできないということなのか」と問い掛ける。