EU離脱にコロナ禍で「二重苦」 英国シティの再起の道は
不動産コンサルタントのナイト・フランクによれば、シティにおける第3四半期のオフィス稼働率は前年同期比で68%低下しており、シティ幹部らは賃貸先企業を金融企業だけでなく、テクノロジー、メディア、法律事務所まで多角化する戦略を強化する取り組みを急ぎはじめているという。
ゴールディン氏によれば、CCランドはシティで2番目に背の高い超高層ビルを2017年6月に11億5000万ポンドで購入して以来、入居企業向けにまるで5つ星ホテルのようなサービスを多数導入してきたという。
リーデンホール・ビルディングは満室状態で、賃貸対象の45フロアのうち、6フロアはITサービス、イベント運営、建築・デザイン、エネルギー流通など、金融以外のセクターのテナントに貸し出されている。平均リース期間は約10年を残している。
このビルで働く人々は、ビル内で、教育プログラムやメンタルヘルスのワークショップ、フィットネスのためのブートキャンプ、社交イベントに参加することができる。
「社員がロンドンにいたいと思うなら、企業もロンドンに残らざるをえない」とゴールディン氏は言う。「選択肢とされる欧州の他都市では、都市中枢に求められる特性を提供していない。ロンドンならすべてが揃う。ダメなのは天気くらいだ」
EUから世界へ拡大も
ロンドンがブレグジットとCOVID-19という二重の脅威をやり過ごすことができれば、引き続き繁栄が約束される。
マクギネス氏は、「人々が何を望んでいるのかを注意深く見極め、将来のニーズに見合うようにルールを策定していく必要がある」と語る。「ロンドンは今後も金融・専門サービスの中心地であり続けると確信している」
また当局は、ロンドンの市場をテクノロジー企業やEU以外の各国企業にとってさらに魅力的なものにするよう、法令の改正を進めている。
英国はすでに日本と締結した通商協定で、国際的な銀行にとっての煩雑な手続を削減し、金融機関が取引データを現地に保管する義務をなくすための規制協力を申し合わせている。スイスとの間では、金融サービス面での連携を深めるために規則の相互承認を行うと発表している。
英国のジョン・グレン金融サービス担当相は、新たな金融サービス法案により、現代的で柔軟性に富み、信頼性の高い規制システムが誕生すると述べている。
ジョナサン・ヒル元欧州委員(金融サービス担当)は、最大の顧客であるEUに対する無制限のアクセスを失った後も、長年のライバルであるニューヨーク証券取引所との競争を続けられるよう、浮動株指数化及びデュアルクラス株式に目配りしつつ、ロンドン証券取引所の上場規則見直しを開始している。
米金融大手シティバンクの英国事業を率いるジェームス・バードリック氏はロイターに対し、「英国の金融サービスは長年にわたり、高い水準と信頼性、イノベーション、思慮深いリーダーシップという点で評価されてきた」と語った。「これが続く限り、私たちがさらに国際事業を拡大できない理由はない」