EU離脱にコロナ禍で「二重苦」 英国シティの再起の道は
伝統と最先端が共存する街
金融センターとしてのロンドンの魅力によって成り立っている関連産業も、やはり改革の必要に迫られている。
超高層ビル「タワー42」の最上階に位置し、ミシュランで1つ星を獲得しているレストランであるシティソーシャルは、これまでより形式張らずに利用しやすい価格で取引先と会食したいと望む新しいタイプの顧客に対応するため、メニューを刷新した。
シティソーシャルのティム・スミス総支配人は、「柔軟な働き方と肩の凝らない服装が増えるなかで、シティは以前よりカジュアルになっている」と語り、同レストランが併設するバー「ソーシャル24」のサービス料収入が30%増えたことを挙げた。バーは時間に追われる常連客の拠点として2倍に拡張されている。
バーで提供される3品コースのセットメニューでは、カレイのグリル、ホワイトオニオンのリゾットが中心で、価格は21ポンド。これに対してレストランの方で提供されるのは、アラカルトで料理を選べる最も安い3品コースでも50ポンド以上かかる。
これまでのところ、シティは懸念されていたほどの雇用を失っていない。EYが提供する指標「ブレグジット・トラッカー」による10月の数値では、2016年の国民投票以降、ロンドンからEU諸国に流出した金融関連の雇用は8000人以下となっている。
当初は、小さな数字としてはEU離脱から1年以内に約3万人、大きな数字では2025年までに最大7万5000人といった試算が見られた。
冒頭で紹介したリュー氏が心配するのは、ロンドンの金融界が持つ、伝統と最先端が共存する独特の雰囲気が今後さらに失われてしまうのではないか、という点だ。
パンデミック前、リュー氏が好んでいたのは、仕事を終えた金曜夜のお約束として、きちんとスーツを着たバンカーとカジュアルなスウェットシャツ姿のフィンテック企業のスタッフが肩を並べ、競い合うようにバーテンダーに声をかけている光景だった。
「私たちの仕事は、かつてはHSBCのバックオフィスで行われていた業務だ。これはとても象徴的で、シティの銀行や伝統ある企業が、私たちのような企業に場所を空けてくれている」と彼は言う。
「私たちはシティという組織のなかに溶け込んでいった。ロックダウンが終っても、同じことが言えるように心から願っている」
(翻訳:エァクレーレン)
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