オバマ回顧録は在任中の各国リーダーを容赦なく斬りまくり
Obama’s Frank Take on World Leaders
「米地方政界の派閥のボスみたいだ。核兵器と国連安全保障理事会の拒否権を持っていることは別にして」と、オバマは言った。「周りは笑ったが、私は大真面目だった。まさにプーチンは、シカゴやニューヨークの政界を牛耳っていた人物を思わせた。タフで抜け目なく、感情に流されず、得意の領域から逸脱しない。利益供与や賄賂、脅し、ペテン、そして時には暴力を使うことも取引のためならいとわない」。そういう人物は「信用できない」とオバマは書く。
オバマはトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領や、チェコのバツラフ・クラウス大統領(当時)ら東欧の指導者の一部にも不信感を抱いていた。民主主義の実現に向けた彼らの関わり方を、薄っぺらなものに感じていた。
エルドアンについては「私の要請におおむね誠意を持って対応してくれた」としながら、「さまざまな不満や、批判されたと感じたことについて話すときには、声が1オクターブ高くなった。民主主義や法の支配の推進に向けた彼の取り組みは、自身の権力維持の役に立たなくなったらあっさり放棄するだろうという印象を強く受けた」と書く。
クラウスについては「(2008〜09年の)経済危機を受けたナショナリズムや反移民感情、EU懐疑主義の高まり」を象徴する人物ではないかと懸念するようになった。「冷戦終結後に世界に広まった、民主化や自由化、統合化に向けた希望の波が引き始めていた」と、オバマは書く。「驚いたことに、クラウスは米上院の共和党議員に交じってもなじんだろうし、エルドアンはシカゴ市議会の陰の実力者として君臨しそうな人物だった」
オバマはヨーロッパの同盟諸国に対しても、特にギリシャの債務危機問題が深刻化した2011年以降は不信感を募らせていった。ドイツやフランスのように財政が比較的健全な国に景気刺激策の導入を強く促したが、「努力は無駄に終わった」と言う。
中国の覇権はまだ遠い
オバマはドイツのアンゲラ・メルケル首相を「正直で知的で優しい」人物と高く評価していた。だが一方で、彼女があまりに保守的で、ドイツ政治の制約を抜け出せないことも認識するようになった。
やはり中道右派の指導者だったフランスのサルコジについては、二枚舌で全く信用ならない人物だと分かったと言う。「彼は自国のことについて明確な方針を立てられる様子ではなかった。まして、ヨーロッパのことなど考えられるはずがなかった」