「コロナで民主主義が後退する」という予想が当たらなかった3つの理由
COVID-19 STRENGTHENED DEMOCRACY
コロナによる民主主義の後退、という予想が当たらなかった大きな理由は3つある。
1つ目は疫学上の理由だ。今年5月に起きたジョージ・フロイド事件はこの夏、米各地で抗議デモを引き起こし、それによる新規感染者の激増が懸念された。だが実際には、大規模な集会も屋外でマスク着用の上で行えば、比較的安全だと判明した。
2つ目はテクノロジーへの反発。感染者接触追跡アプリは東アジア以外では不発だ。プライバシーを過度に侵害すると見なされ、大きな政治的反発を受けている。
3つ目は政治的理由だ。緊急事態宣言を悪用しようとした者もいるが、より多くの場合、独裁的指導者は危機の深刻度を否定したり情報を隠したり、疑似科学的な解決策に飛び付いた。ブルガリアの政治学者イワン・クラステフいわく「危機が独裁主義者を利するのは、自らつくり上げた危機のときだけだ。彼らが必要とするのは打倒すべき敵であり、解決すべき問題ではない」。
現在の混乱が各国の政治に与える究極的な影響は読めない。だが、未来は民主主義の危機が叫ばれた1年前より、はるかに開けて見える。
©2020 The Slate Group
<2020年11月24日号掲載>
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