大統領選でまた大外れした世論調査はもういらない?
THE POLLS WERE USELESS
米上院選も、民主党優位とされた世論調査とは大違いだ。接戦予想を受けて注目されたサウスカロライナ州では、共和党候補が楽勝した。
「世論調査(特に選挙区レベル)がこれほど人々を惑わせるのは珍しい。分析には長い時間がかかる」。米選挙を分析するクック・ポリティカル・レポートの記者兼政治アナリストで、著名な世論調査専門家のデーブ・ワッサーマンは大統領選翌日の朝、そうツイートした。
最終的にバイデンが勝利すれば、ある程度まで自分たちは正しかったと、世論調査機関やデータジャーナリストは主張するだろう。公平を期すために言えば、ファイブサーティーエイトは最終盤の予想で、バイデンの地滑り的勝利に1対3のオッズを付けていた。各機関の得票数予想も、かなり正確だった可能性が高い。
だが腹立たしいことに、たとえトランプが逆転勝利を収めても、彼らはその手法を正当化できる。
選挙は野球と同じではない
2016年大統領選での失態を受けて、シルバーをはじめとするデータジャーナリストは今回、世論調査でどれほどバイデンが優位でも、トランプ勝利の可能性は排除できないとわざわざ断った。「勝利確率10%は、0%とは違う。これはロサンゼルスのダウンタウン地区での降水確率とほぼ同程度であり、同地区にも雨は降る」と、ファイブサーティーエイトは最終予想で主張した。
世論調査はもう信頼するな、と言っているのではない。欠陥はあっても、世論調査は選挙活動のリソース配分を判断する上で重要なツールであり、選挙戦を追うジャーナリストにとっては報道に欠かせない存在だ。だが今や業界は世論調査分析を、科学と称する一種の宗教に変えてしまった。この手の予想がなぜ役に立つのか、理由は不明になる一方だ。
実際には、世論調査は選挙の現実の一端しか明らかにしない。今回の大統領選では、とりわけそうだ。
選挙は野球とは違う(シルバーは当初、プロ野球選手のパフォーマンス分析で名をはせた)。プレーヤー全員が従う予測可能なルールが常に存在するとは限らない。郵便投票の無効を求めるトランプや一部の州の共和党員の動き、有権者になるはずだった数十万人が宣誓式の延期で米市民権を取得できず投票できなかったこと、家から出るなと促す偽情報が特定の有権者を対象に拡散したこと──アルゴリズムに干渉しかねないノイズの量がはるかに多いのだ。