最新記事

世論調査

大統領選でまた大外れした世論調査はもういらない?

THE POLLS WERE USELESS

2020年11月10日(火)19時20分
ジョシュア・キーティング

米上院選も、民主党優位とされた世論調査とは大違いだ。接戦予想を受けて注目されたサウスカロライナ州では、共和党候補が楽勝した。

「世論調査(特に選挙区レベル)がこれほど人々を惑わせるのは珍しい。分析には長い時間がかかる」。米選挙を分析するクック・ポリティカル・レポートの記者兼政治アナリストで、著名な世論調査専門家のデーブ・ワッサーマンは大統領選翌日の朝、そうツイートした。

最終的にバイデンが勝利すれば、ある程度まで自分たちは正しかったと、世論調査機関やデータジャーナリストは主張するだろう。公平を期すために言えば、ファイブサーティーエイトは最終盤の予想で、バイデンの地滑り的勝利に1対3のオッズを付けていた。各機関の得票数予想も、かなり正確だった可能性が高い。

だが腹立たしいことに、たとえトランプが逆転勝利を収めても、彼らはその手法を正当化できる。

選挙は野球と同じではない

2016年大統領選での失態を受けて、シルバーをはじめとするデータジャーナリストは今回、世論調査でどれほどバイデンが優位でも、トランプ勝利の可能性は排除できないとわざわざ断った。「勝利確率10%は、0%とは違う。これはロサンゼルスのダウンタウン地区での降水確率とほぼ同程度であり、同地区にも雨は降る」と、ファイブサーティーエイトは最終予想で主張した。

世論調査はもう信頼するな、と言っているのではない。欠陥はあっても、世論調査は選挙活動のリソース配分を判断する上で重要なツールであり、選挙戦を追うジャーナリストにとっては報道に欠かせない存在だ。だが今や業界は世論調査分析を、科学と称する一種の宗教に変えてしまった。この手の予想がなぜ役に立つのか、理由は不明になる一方だ。

実際には、世論調査は選挙の現実の一端しか明らかにしない。今回の大統領選では、とりわけそうだ。

選挙は野球とは違う(シルバーは当初、プロ野球選手のパフォーマンス分析で名をはせた)。プレーヤー全員が従う予測可能なルールが常に存在するとは限らない。郵便投票の無効を求めるトランプや一部の州の共和党員の動き、有権者になるはずだった数十万人が宣誓式の延期で米市民権を取得できず投票できなかったこと、家から出るなと促す偽情報が特定の有権者を対象に拡散したこと──アルゴリズムに干渉しかねないノイズの量がはるかに多いのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中