インドネシア、現職閣僚が汚職容疑で逮捕 「牙抜かれた」政府の汚職捜査機関KPKが久びさの快挙
ハワイ発ANA便から降りてきたエディ・プラボウォ海洋水産相が拘束されたようす KOMPASTV / YouTube
<権限縮小などで弱体化された捜査機関だが、社会不正をただす情熱は消えていなかった>
インドネシアの政府機関「国家汚職撲滅委員会(KPK)」は11月25日、現職閣僚のエディ・プラボウォ海洋水産相を汚職容疑で逮捕したことを明らかにした。
KPKによるとインドネシアが今年5月新たに解禁したロブスターの幼生を海外に輸出する政策をめぐり、エディ容疑者が担当大臣として輸出業者などから多額の賄賂を受け取っていた疑いがあるという。
エディ容疑者とともに訪米に同行していた妻や海洋水産省関係者、贈賄側の輸出業者なども逮捕や容疑者認定されており、かなり大掛かりな贈収賄事件に発展しそうだ。
インドネシア最強の捜査機関の一つとされてきたKPKだが、2019年以来国会による捜査権力の縮小や監視機関設置などでこのところ大きな事件摘発が減少。大物容疑者の逮捕もなく、「KPKはもはや死んだ」とさえ国民から言われていた。
それが今回は久々の現職閣僚の逮捕事件ということで地元マスコミも「KPKは死なず」という論調で今回の贈収賄事件を大きく伝えている。主要英字紙「ジャカルタ・ポスト」は「KPKが大物逮捕」との見出しを掲げて報道している。
米国から帰国した未明の空港で逮捕
KPKなどによると25日午前1時半前、ジャカルタ西郊のスカルノハッタ国際空港に米ハワイでの公務を終えて帰国したエディ容疑者をKPK捜査官が待ち構えて、同行していた国会議員の妻とともに身柄を拘束。所持品や銀行のATMカードをその場で押収するという「逮捕劇」だった。
25日午後、KPKの係官に付き添われて報道陣の前に現れたエディ容疑者は「お騒がせして本当に申し訳ない。大臣の職や党の役職などすべての役職を辞任する意向だ。今回の件に関してはすべて自分の責任である」とKPKの捜査には全面的に協力する姿勢を示した。
KPKによると、エディ容疑者に加えて国会議員である妻のほか、水産省関係者やロブスター輸出業者など計17人がこれまで逮捕され、なお複数の関係者を容疑者認定して行方を追っているという。
地元マスコミなどの報道ではエディ容疑者側にロブスター幼生輸出業者などから渡った賄賂は総額で98億ルピア(約7160万円)に上るものとみられている。