最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙、ラストベルトもトランプ離れ コロナ失政批判で地盤動揺

2020年10月26日(月)11時33分

米オハイオ州北東部のコートランドで暮らすターニャ・ウォジャークさん(39)は生粋の共和党員で、トランプ大統領が再選を果たす上では欠かせない郊外地域の女性層の典型だ。しかし、既に彼女の心はトランプ氏から離れてしまった。写真はペンシルベニア州ストッカータウンの住宅に飾られたトランプ大統領の人形。2日撮影(2020年 ロイター/Brian Snyder)

米オハイオ州北東部のコートランドで暮らすターニャ・ウォジャークさん(39)は生粋の共和党員で、トランプ大統領が再選を果たす上では欠かせない郊外地域の女性層の典型だ。しかし、既に彼女の心はトランプ氏から離れてしまった。

ウォジャークさんは今年4月、友人の1人を新型コロナウイルスで失っており、トランプ氏の対応に怒りを隠さない。トランプ氏が時々しかマスクを着用せず、自分が感染した後でさえ、新型コロナを軽視する発言を繰り返す様子は「全く大統領の振る舞いではない」と批判。4年前に同氏に投票したことを後悔していると打ち明けた。今、彼女の自宅前の芝生には、民主党候補・バイデン前副大統領への投票を呼び掛ける手描きの看板がある。

そこから東に547キロ離れたペンシルベニア州バンコアでレストラン付きのビール醸造所を営むレオ・ボンジョルノさんも、今回の大統領選でバイデン氏に票を入れるつもりだと話す。彼は前回2016年は棄権していた。

ペンシルベニア州は6月にバーとレストランの営業規制を緩和し始めたが、それでもなおボンジョルノさんの店は、引き続き先行きが不安な状態にある。同州の新規感染者数は10月に入って4月半ば以来の水準に増加し、常連客の多くが酒を飲みに来るのを怖がっていると話す。

連邦政府から受け取った支援融資額は、失業した場合にもらえる保険金より少ないし、醸造所の毎月の支払いは売上高をはるかに上回っている。ボンジョルノさんは、米国が求めているのは零細企業がパンデミックを生き残るために何が必要か分かる大統領で、それはトランプ氏ではないと言い切る。「現在、われわれは債権者が代金回収に訪れるのをただ待っているだけだ」と苦境を訴えた。

このオハイオ、ペンシルベニアを含めた「ラストベルト(さびついた工業地帯)」は米大統領選では激戦州に位置付けられる。16年にはトランプ氏の勝利に貢献しており、今回も結果を左右しそうだ。12年に民主党のバラク・オバマ氏に投票したこの地域の多くの白人や労働者は、16年には経済再生を掲げたトランプ氏に共感した。

そうした有権者のなお多くはトランプ氏を支持するが、今年になってその支持率はじりじりと下がりつつある。もちろん、その大きな理由はパンデミックだ。どうやら今回の大統領選は、トランプ氏の新型コロナ対応を巡る信任投票の様相が濃くなってきたことが、世論調査から分かる。

ロイター/イプソスが10月9─13日に全米で実施した調査では、投票に行く公算が大きい有権者の50%は、バイデン氏の方がパンデミックをうまく乗り切れると回答。トランプ氏に軍配を上げたのは37%だった。ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンという激戦州における調査結果でも、新型コロナ問題の指揮を執るのはバイデン氏がふさわしいとの見方が示された。

最近の複数の調査を見ると、バイデン氏はオハイオ州でトランプ氏と互角、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンでは若干優勢に選挙戦を進めている。

根深い不満

ウォジャークさんのコートランドはトランブル郡、ボンジョルノさんのバンコアはノーザンプトン郡に属し、いずれの郡も16年にトランプ氏が制するまでは数十年間、民主党の地盤だった。

多くの住民がトランプ氏に投票したのは、保護主義的な通商政策や銃所有の権利尊重、移民への強硬姿勢などを好感したからだ。その結果、16年にトランプ氏はトランブル郡で約6%ポイント、ノーザンプトン郡で約4%の差で勝利を収めた。

ところが今、彼らの一部はトランプ氏にうんざりしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、大統領と親密な聖職者暗殺計画で2人拘束 ウ

ビジネス

米FRB、財政不透明でもQT継続可能=クリーブラン

ビジネス

自動運転ソフトのネット更新、中国が当局の承認義務付

ビジネス

中国人民銀行、アウトライト・リバースレポで2月に1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 3
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教育機会の格差
  • 4
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 5
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 9
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中