フィリピン当局、自爆テロ志願の女を拘束 両親も自爆テロ決行で死亡
未だ逃走中の爆弾製造専門家
フィリピンでは8月24日にスールー州ホロ島ホロ市内の2か所で連続自爆テロが発生し15人が死亡。実行犯はいずれも「アブ・サヤフ」のメンバーの女性とされている。
一方、使用された自爆用爆弾を製造し、自爆テロを指揮したとされている「アブ・サヤフ」の幹部ムンディ・サワジャン容疑者は依然として行方が不明となっている。
8月24日のテロ以降、ムンディ容疑者が一緒に逃亡していたとされるルリー容疑者夫妻だが、夫のバソ容疑者が殺害され、ルリー容疑者も今回身柄を確保されたことになり、治安当局は現在なお逃亡中のムンディ容疑者を最重要容疑者として鋭意その行方を追っている。
ムンディ容疑者は中東のテロ組織「イスラム国(IS)」のフィリピン支部の代表者で「アブ・サヤフ」のリーダー格とされるハティブ・ハジャン・サワジャン容疑者の甥にあたる人物という。
インドネシア当局とも密接な情報交換
フィルピン治安当局、特に情報機関は「アブ・サヤフ」のメンバーにインドネシア人が加わっているケースが多いことなどから、インドネシアの対テロ機関と情報交換を密にして「対テロ作戦」で共同歩調をとっている。
今回のルリー容疑者の身柄確保やその夫バソ容疑者の死亡情報に関してもすでにインドネシア側に情報提供している、という。
特にバソ容疑者はインドネシア国内のイスラム系テロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」と関係があり、2016年に東カリマンタン州サマリンダで起きたオイクメ教会爆弾テロ事件への関与が疑われ、インドネシア国内で手配されていたという。
このようにインドネシアのテロ組織とフィリピンの「アブ・サヤフ」はいまや共同ネットワークを構築して、海路密入国を繰り返しては爆弾テロや自爆テロを繰り返しているのが実態とされる。
両国の治安当局、対テロ組織に加えて海上警備当局、入国管理組織、海軍や空軍なども動員した大規模、広域の対テロ作戦が展開されている。
フィリピン南部ミンダナオ地域を統括するフィリピン軍幹部は地元メディアに対して「自爆テロを実行しようとしていたルリー容疑者をテロ実行前に確保したことはアブ・サヤフにとって大きな痛手となっているはずだ。さらに掃討作戦を強化して逃走中の残党確保と新たなテロ防止に全力を尽くしたい」と明らかにしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など