コロナ禍で混乱のアメリカ大統領選 注目の「選挙監視人」とは
米大統領・議会選を巡り、与党・共和党は支持者数千人を動員して、期日前投票所や郵便投票の回収箱に不正がないか見張らせようとしている。写真は9月、ノースカロライナ州ローリの選挙管理委員会で、投票用紙の発送準備をする係員(2020年 ロイター/Jonathan Drake)
11月3日の米大統領・議会選を巡り、与党・共和党は支持者数千人を動員して、期日前投票所や郵便投票の回収箱に不正がないか見張らせようとしている。これは本来、法令で定められた「選挙監視人」が果たす役割だ。
選挙監視がどのような歴史的な経緯をたどってきたか、また、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う郵便投票の急増や、トランプ大統領が根拠なく郵便投票で不正が起きると主張していることで、選挙監視にどれだけ新たな意味合いが帯びてくるか、以下で説明する。
選挙監視とは
選挙監視人が米国の選挙制度の一部になった起源は、18世紀にさかのぼる。監視活動は州法や地元自治体の規則に基づいて行われ、与野党双方から選出された人々が投票や、さらには相互の監視人をも見張り、円滑な選挙の進行を確保する。
州によって選挙監視人の呼び方や、与えられた役割はさまざまだ。ある地域では監視専門の「ウオッチャー」と、投票の違法性を指摘することができる「チャレンジャー」は明確に区別される。ところが、別の地域では監視と投票の異議申し立ての権限を同じ人が有する。
投票所の外で特定候補者の支持者たちが看板掲示やちらし配布などで陣営側への投票を誘おうとする際に、こうした支持者たちがどこまで近寄ってよいかを定めているところもある。
監視人の越権行為に対する不満も、頻繁に出てくる。時には監視人が、マイノリティーを差別する意図で有権者の投票資格に異を唱え、そうした行為を阻止するための訴訟が起こされたケースもある。
1999年のミシガン州ハムトラムク市の選挙では、「より良きハムトラムクのための市民」と称する団体から送り出されたチャレンジャーが、「暗い肌の色と明らかなアラビア風の氏名」を持った40人のアラブ系米国人の投票資格に疑義を呈し、彼らは選管当局から米国市民であると宣誓証明することを強いられた。その後、同市は司法省からの命令で選挙従事者に対する研修を行うことを受け入れ、2003年まで市の選挙を監督する連邦政府の担当者が任命された。
1981年には、ニュージャージー州の選挙で共和党側が主にマイノリティーが居住する地域で投票所の外に武装した人員を配置する不穏な行為があり、以後、同党は投票の安全確保のために行き過ぎた措置を講じないことに同意した。ただ、この取り決めは、民主党からの更新の要請を連邦裁判所が却下したため、2018年に失効しており、今回の選挙で共和党は再び制約なしに投票所の「治安維持活動」が可能となる。