コロナ禍で混乱のアメリカ大統領選 注目の「選挙監視人」とは
選挙監視に関する規定
選挙監視の有資格者や権限は、州によって非常に大きな違いがある。例えば、ペンシルベニアでは選挙監視のほか、投票率と投票機械を点検し、選管当局に懸念を伝える形で投票に異議を申し立てることができる。もっとも有権者との直接のやり取りや、単に投票を遅延させるための異議申し立ては禁じられている。
監視人の資格要件もひとくくりにできないが、通常は登録有権者であることが想定されている。一部の州では、あらかじめ選管当局に認定を受けなければならない。ノースカロライナの場合は「道徳的に優れた人物」が求められる。
投票の大半を郵便方式で実施する州の法令でも、監視人は認められている。オレゴンでは、各政党とその候補者が選挙従事者の開票や集計を監視する人を送り出すことができるが、そうした監視人がこれらの手続きを妨害してはならないとの規定がある。
今年の特徴
パンデミックの発生で今年の選挙は、投票所ではなく郵便を利用する有権者がかつてないほど多くなる。
トランプ氏は具体的な根拠を示さないまま、郵便投票が不正の温床になると繰り返し、同陣営はペンシルベニアのように1人が複数の投票用紙をまとめて投函するのをおおむね禁じている所で、そうした不適切行為を監視する数千人のボランティアを集めつつある。
こうした動きで試されているのは、投票日に投票所に行くことを前提としている選挙関連法の枠組みだと専門家は話す。ペンシルベニアのフランクリン・アンド・マーシャル大学のテリー・マドンナ教授(政治学)は、期日前投票の場所に監視人が立ち入ろうとすることや、郵便投票を投函しようとしている有権者に異議を唱えようとする可能性を巡り、そうしたことでのルールブックなど存在しないと述べた。
銃による威嚇の不安
今年は抗議デモと武装した市民グループが衝突する光景が見られただけに、公正な選挙権確保を推進する団体などからは、投票所の外に銃で威圧する集団が戻ってくるのではないかとの不安が広がっている。
ペンシルベニア、ミシガン、ノースカロライナ、ウィスコンシン、バージニアといった激戦州では、市民が公の場で銃を携帯する「オープン・キャリー」が許される地域だ。投票所に火器を持ち込むことを禁じる明確な規定もない。
もちろん有権者を脅そうとする行為は、州や連邦の法令違反になる。複数の選挙権確保推進団体は、多数の弁護士をそろえて選挙妨害に対抗し、場合によっては裁判所にそうした行動の中止命令を求める構えだ。
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