最新記事

2020米大統領選

コロナ禍で混乱のアメリカ大統領選 注目の「選挙監視人」とは

2020年10月11日(日)15時32分

選挙監視に関する規定

選挙監視の有資格者や権限は、州によって非常に大きな違いがある。例えば、ペンシルベニアでは選挙監視のほか、投票率と投票機械を点検し、選管当局に懸念を伝える形で投票に異議を申し立てることができる。もっとも有権者との直接のやり取りや、単に投票を遅延させるための異議申し立ては禁じられている。

監視人の資格要件もひとくくりにできないが、通常は登録有権者であることが想定されている。一部の州では、あらかじめ選管当局に認定を受けなければならない。ノースカロライナの場合は「道徳的に優れた人物」が求められる。

投票の大半を郵便方式で実施する州の法令でも、監視人は認められている。オレゴンでは、各政党とその候補者が選挙従事者の開票や集計を監視する人を送り出すことができるが、そうした監視人がこれらの手続きを妨害してはならないとの規定がある。

今年の特徴

パンデミックの発生で今年の選挙は、投票所ではなく郵便を利用する有権者がかつてないほど多くなる。

トランプ氏は具体的な根拠を示さないまま、郵便投票が不正の温床になると繰り返し、同陣営はペンシルベニアのように1人が複数の投票用紙をまとめて投函するのをおおむね禁じている所で、そうした不適切行為を監視する数千人のボランティアを集めつつある。

こうした動きで試されているのは、投票日に投票所に行くことを前提としている選挙関連法の枠組みだと専門家は話す。ペンシルベニアのフランクリン・アンド・マーシャル大学のテリー・マドンナ教授(政治学)は、期日前投票の場所に監視人が立ち入ろうとすることや、郵便投票を投函しようとしている有権者に異議を唱えようとする可能性を巡り、そうしたことでのルールブックなど存在しないと述べた。

銃による威嚇の不安

今年は抗議デモと武装した市民グループが衝突する光景が見られただけに、公正な選挙権確保を推進する団体などからは、投票所の外に銃で威圧する集団が戻ってくるのではないかとの不安が広がっている。

ペンシルベニア、ミシガン、ノースカロライナ、ウィスコンシン、バージニアといった激戦州では、市民が公の場で銃を携帯する「オープン・キャリー」が許される地域だ。投票所に火器を持ち込むことを禁じる明確な規定もない。

もちろん有権者を脅そうとする行為は、州や連邦の法令違反になる。複数の選挙権確保推進団体は、多数の弁護士をそろえて選挙妨害に対抗し、場合によっては裁判所にそうした行動の中止命令を求める構えだ。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中