最新記事

米中対立

トランプTikTok禁止令とTikTokの正体

2020年8月10日(月)08時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●TikTokのサクセスストーリーが悲劇に終わるとすれば、高まる北京の権威主義が中国の起業家の競争力を損なうことにつながるだろう。もっと言えば、TikTokの悲劇は、中国がテクノロジーのリーダーになる可能性を損ない、中国がアメリカと競争して世界に影響を与えるテクノロジーを生み出すことができなくなることを意味している。

ずいぶんと控えめな表現をしているが、the Atlanticの分析は非常に示唆的だ。

中国の反応

それに対して、中共中央政治局委員で中央外事工作委員会弁公室主任の楊潔チ氏は8月7日、「歴史を尊重し、未来を見据え、断固として安定的な中米関係を維持すべきだ」という声明を出した。中央テレビ局CCTVは特別番組を組んで、声明文を解説したが、その中で「中国の先端的な通信企業」とは言ったが、決してTikTokの名前は出していない。

アメリカは「新冷戦構造」を無理やりに作りたがっており、かつてソ連との冷戦構造で成功しているので、中国をも新冷戦構造の中に意図的に引き込み、中国の成長を抑えこもうとしていると解説している。その上でアメリカは中国企業に対する「いじめ」をやめよと主張していた。

米中両国が協力できれば世界中が恩恵を受けると指摘しているが、それは中国に都合がよすぎるというものだろう。対話に持って行きアメリカが柔軟な態度を取れば、中国は思いのままに世界制覇に向けて進むことができる。

日本の自民党や公明党の一部の政治家も又、「お隣とは仲良くすべきで対話が必要」などとして、習近平の国賓招聘を肯定したりする危なさを持っている。

日本は?

6月末にも「インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表」したばかりだ。「インドの国家安全と防衛を脅かす行為を行い、最終的にはインドの主権と倫理を侵害している」というのが理由だ。

また7月13日、「オーストラリア政府がTikTokを念頭にSNSの危険性に言及」しているという報道があった。

日本の場合は、官公庁などが公式TikTokアカウントを開設しており、日本でのユーザーが1000万人を超えている。そこで自民党の「ルール形成戦略議連」がTikTokだけでなく、中国製アプリの利用制限を9月にも政府に提出する方針を固めているようだ。日本では金融システムや保安検査などにおいても中国製品を使っている場合がある。なんと平和な日本だろう。

TikTokの正体は――?

まさかとは思うが、万一にも張一鳴が、孔子学院のスタッフのように、中国政府に操られているのだったら、どうするのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シティ、サウジから地域統括拠点設置の認可取得=社

ビジネス

ECB、インフレ目標下振れリスクを注視=仏中銀総裁

ビジネス

VW、コスト削減に人員削減と工場閉鎖は不可避=ブラ

ワールド

パキスタン首都封鎖、カーン元首相の釈放求める抗議デ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中