習近平訪韓予定の狙いはむしろ日本
なぜシンガポールを重視したかと言うと、一つには香港国家安全維持法(香港国安法)実施以降、多くの在香港投資家がシンガポールに根拠地を移転しているからだが、もう一つには国際社会における香港国安法への意思表明があるからだ。
6月30日にスイスのジュネーブで開催された国連人権理事会で香港国安法に対して「反対27ヵ国」と「賛成53ヵ国」の共同声明が発表されたのだが、シンガポールや韓国など数カ国は「反対」でもなく「賛成」でもなく、意思表明をすることを棄権している。
アメリカは2018年に国連人権理事会を脱退しており、反対を表明した国はアメリカを除くG7をはじめ、民主的価値観を抱く西側諸国が多い。もっとも、イタリアは習近平政権が唱える「一帯一路」に参加することを表明しており、また中国が3月11日から始めた医療支援である、いわゆる「マスク外交」の最初の対象国であったことから、「反対27ヵ国」の中には入っていない。したがってG7からはアメリカとイタリアが抜けているので、5ヵ国でしかなく、国際社会におけるG7の重みのなさを如実に表している。
一方、賛成した53ヵ国のうち、47ヵ国(88.8%)は「一帯一路」参加国であることを考えると、いかに中国の戦略が危険な効果を発揮しているかをうかがわせる。
特に今年6月7日、中国の国務院新聞弁公室はコロナに関する「中国行動」白書を発表し、「一帯一路」沿線国の内、発展途上国および貧困国に対する債務を暫時減免すると宣言した。
また6月17日にはリモートでアフリカ53ヵ国との間の首脳サミットを開催し、そこでも発展途上国と貧困国に対する債務の減免を宣言した。
そのような中で中国を敵に回して反対表明をするのは難しい。
韓国やシンガポールなどはその支援の対象ではないが、それでも「中立」を保っているのは、中国にとって好ましいことではない。
7月31日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ等17の人権NGOは、「香港・国家安全維持法の拒否を求める世界的な呼びかけ」を行なった。
呼びかけた国は40か国の政府(欧州連合の27の加盟国すべて、オーストラリア、カナダ、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、韓国、スリランカ、タイ、イギリス)で、このうち「シンガポール、韓国」はインドやインドネシア、フィリピンなどと共に意思表明を棄権しているのだ。