習近平訪韓予定の狙いはむしろ日本
北京での中韓首脳会談(2017年) REUTERS/Nicolas Asfouri
訪韓の狙いには香港問題などが大きく、実はそこに日本が絡んでいる。米韓離間は既にほぼ実現しており、中国は日韓の離間を喜んでいる。日中韓自由貿易協定を進めてデジタル人民元の実現を遠くに睨んでいるからだ。
米韓離間はほぼ実現
中国が長いこと狙ってきた「米韓離間」は文在寅政権が誕生してからほぼ実現しており、今さら注目する話ではない。
たとえば2017年6月8日のコラム「韓国を飲み込んだ中国――THAAD追加配備中断」や2018年8月1日のコラム「遂に正体を表した習近平――南北朝鮮をコントロール」あるいは2019年8月26日のコラム<「中露朝」のシナリオに乗った韓国のGSOMIA破棄>などに書いてきたように、米韓離間という習近平政権の狙いは早くから実現しつつあるのだ。
米韓間に隙間ができたため、トランプ大統領などは2019年8月24日からフランスで開催されたG7(先進7ヵ国)サミットで「文在寅大統領は信用できない」と批判し、「金正恩委員長が『文大統領は嘘をつく人だ』と言った」と暴露するなど、公けの席で韓国の大統領を蔑視することさえ見られるようになった(参照:2019年8月27日のコラム<嘘つき大統領に「汚れ役」首相――中国にも嫌われる韓国>)。
したがって、今さら米韓間に楔を打つのが目的というような話ではない。
習近平国家主席の訪韓は、文在寅政権誕生後に何度も提唱されたが、ここに来てようやく機が熟したということになろう。
国連人権理事会で香港国安法の賛否表明を棄権したシンガポールと韓国
むしろ注目すべきは、習近平国家主席訪韓の赤絨毯を敷きに行った中国外交トップの楊潔チ氏(中共中央政治局委員)が、訪韓前にシンガポールを訪問していることだ。
楊潔チ氏がシンガポールのリー・シェンロン首相に「新型コロナウイルス感染症の猛威に直面し、双方は互いに見守って助け合い、産業チェーンとサプライチェーンの安定的な流れを保障し、新型コロナ対応での協力を着実に進めている。今年は中国シンガポール国交樹立30周年に当たり、両国関係は新しい歴史の出発点に立つ」と言ったのに対し、リー首相は「シンガポールは中国とのハイレベル往来を緊密化させ、二国間の協力メカニズムを生かして、アセアン・中国関係の発展を推進していきたい」と応じている。