韓国・文在寅の支持率9カ月ぶりの低水準に ソウル住宅価格3年で1.5倍に上昇
韓国では2月、新型コロナウイルスの感染拡大により失業率が跳ね上がったにもかかわらず、インテリアデザイナーのベク・ソンミンさん(35)は妻に看護職を辞めるよう頼んだ。ソウルで2015年4月撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)
韓国では2月、新型コロナウイルスの感染拡大により失業率が跳ね上がったにもかかわらず、インテリアデザイナーのベク・ソンミンさん(35)は妻に看護職を辞めるよう頼んだ。マンション購入という長年の夢をかなえるためだ。
高騰する不動産価格を冷やすため、政府は一連の措置を導入。この措置を受けベクさんは、妻が年収5800万ウォン(約500万円)の仕事を辞めればマンションを買える確率は高まると考えた。
奇妙な計画の中身はこうだ。
政府は低所得の「新婚」夫婦が住宅を入手しやすくなるよう、新規開発物件の購入に割当制度を導入した。ベクさんは、妻の収入をしばらく無くすことで、この制度の応募要件を満たす水準まで2人の合計年収を下げようと考えた。
だが結局、ベクさん夫妻は職場のあるソウルから西に2時間の仁川に居を構えることに決めた。住宅ローンの借り入れ規則がソウルより緩く、物件価格もはるかに安いからだ。
「ソウルの住宅価格は、とても手が届かなくなった。仁川くんだりまで行かなければ住居を買えなかった」とベクさん。「政府はローン規制によって私たちの夢を粉々にし、住宅を買うなと言うようなものだ。頭にきた」
文在寅(ムン・ジェイン)政権が20を超える住宅価格鎮静化策を導入したにもかかわらず、調査会社ナンビオによると、ソウルの住宅価格は2017年以来、50%以上も上昇した。上昇スピードは世界一だ。
これにより、多くの若い家族の夢は砕けた。韓国経済の発展を支えてきた「中産階級」入りが、手の届かない夢になった可能性もある。
格差への怒り
左派の文大統領は17年の就任時、全国民に平等な環境を提供し、一生懸命に働けば家族を養い、家を買える社会を実現すると誓った。
しかしLTV(不動産価格に対する借入金比率)を大幅引き下げる住宅ローン規制の強化と、投機抑制のためのさまざまな税制措置を導入した結果、家賃も上がり、求められる頭金の額も増加。こうした政策で救おうとした人々を害する結果になっている。
ソウルの規制では、借り入れ上限が住宅価格の40%と定められている。ソウルの富裕層エリア、江南の一角では住宅購入が許可制になっており、許可が無く、投機的取引と見なされた購入は無効となる場合がある。
「金のスプーン」をくわえて生まれた金持ちの子供は現金で家を買えるが、「汚れたスプーン」の子供は二級市民から抜け出せず、文大統領が取り組むと約束した格差をさらにあおるだけだ、との批判も出る。
弁護士や税理士への取材によると、持ち家の「階段」を上るためにわざと所得を削る計略のほか、書類上は離婚して不動産税を減らしたり、結婚届を出さず夫妻がそれぞれ住宅購入を申請できるようにしたりするなど、市民はあの手この手で住宅購入を試みている。
新型コロナ対策が成功し、一時は支持率が急上昇した文大統領だが、6日発表の世論調査によると、経済政策への怒りから支持率は44.5%と、約9カ月ぶりの低水準に下がった。
大統領府はこの記事へのコメントを控えた。