最新記事

事件

韓国高裁、世界最大の児童ポルノサイトをダークウェブで運営した男を擁護? 米検察の引き渡し要請を却下

2020年7月21日(火)11時55分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

世界最大の児童ポルノサイトと言われている「ウェルカム・トゥー・ビデオ」を運営していたソン・ジョンウ。Yonhapnews / YouTube

<本来はポルノが禁止されている韓国。だが闇の世界では異常な犯罪がうごめいていた......>

スマートフォンの普及により、インターネットがいつでもどこでも使えるようになって便利な世の中になった反面、ネット上での犯罪も増加している。特にネットでの性犯罪といえば、今年の初め日本でもニュースになった「N番部屋事件」は韓国を激震させた。性搾取されていた被害者には未成年者も多く衝撃的な事件だったが、今度は世界最大の児童ポルノサイトをめぐって、韓国で更なる騒動が巻き起こっている。

世界最大の児童ポルノサイトと言われている「ウェルカム・トゥー・ビデオ」は、2015年6月から韓国人ソン・ジョンウによって開始され、彼が警察に捕まる2018年3月まで運営されていた。冒頭に書いたN番部屋は、2018年の後半に運営開始されているので、それよりも先に作られている。N番部屋では、海外のメッセージアプリ「テレグラム」のチャットルームでやり取りされていたが、この「ウェルカム・トゥー・ビデオ」は、特殊なブラウザーを通じてのみ接続できるようになっており、ダークウェブと呼ばれる方法で運営されていた。

3年間で4億円を荒稼ぎ

全世界に100万人以上の会員をもち、サイト上には8歳の幼女の性器など、常識では考えられないような幼児ポルノを約20数万点以上掲載していた。韓国の報道によると、約3年間の収益は、四十数億ウォン(=約4億円)と発表されている。

ソン・ジョンウは、すでに韓国で性搾取物を配布した疑いなどで1年6カ月の実刑が確定し、服役中だった。ところが出所満期まで10日を控えた今年4月、アメリカ法務省から犯罪人引渡し請求の対象になったと連絡が来た。アメリカの検察はソン・ジョンウへ「児童わいせつ物配布」など9件の容疑を適用して裁判所に起訴した後、韓国政府に犯罪人引渡しを請求したのだ。

引渡し請求を受けた韓国法務省は、ソン・ジョンウ引き渡し逮捕状を発行した後、ソウル高等裁判所に犯罪人引渡し審査を請求した。

ところが、今月6日ソウル高等裁判所は法務省の引渡し請求を棄却する決定を下し物議を醸すこととなる。ソウル高等裁判所は、アメリカにソン・ジョンウを引渡した場合、「二重処罰の危険がある」としている。さらに、「サイトの会員の大多数が韓国人だったこともあり、会員の捜査もこれから行われるという時に海外へ引き渡せない。」また、「犯罪人をさらに厳しく処罰する場所へ送るのは、犯罪人引渡し制度の趣旨ではない」というのがソウル高等裁判所の主張だ。


【話題の記事】
・感染防止「総力挙げないとNYの二の舞」=東大・児玉氏
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、21日の新型コロナ新規感染230人程度 13日連続で100人以上続く
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中