イギリス パブを再開しても、ビールは大量廃棄
ほとんどのパブで、栓を開けないまま消費期間が切れてしまった...... LBC-YouTube
<イギリスでは、7月4日にパブやレストランの営業が再開となったが、英国版消費税の減税、アルコールは対象外でパブ利用も減少、英国文化のパブに陰り?>
パブ再開前に浮足立つ人々
新型コロナウイルス感染症の予防策として3月からロックダウンを実施していた英国だが、7月4日にイングランドで、パブやレストランの営業が再開となった。4日は土曜日だったこともあり、「スーパーサタデー」と表現され、イングランド全体がはしゃいでいるようだった。
ツイッターでは、パブ再開を受けて英国の財務省が喜びのあまり、公式ツイッターで「パブ再開を祝って乾杯!」と投稿。「多数の死者が出ているのに不謹慎」と批判が殺到したため、同省は投稿を削除した。
ボリス・ジョンソン首相は、パブ再開に際して「羽目を外しすぎないように」と国民に注意を促し、ロンドン警視庁は市中の警官配備を強化し、「落ち着いて、常識的に」パブを楽しんでほしいと呼びかけた。
約3カ月を経ての再開を前に国民の多くが浮足立ってしまうような、英国文化の象徴とも言えるパブ文化だが、実は危機にさらされているという。
景気支援策、アルコールは対象外
まず、新型コロナウイルスで受けた打撃に対する景気支援策として、英国政府は日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)を、接客業と娯楽産業について、現在の20%から5%に削減すると決定した。しかしアルコールがこの対象外となってしまったのだ。
この減税措置は、7月15日から来年1月12日までの半年間、ホテルなどの宿泊施設や、レストランやパブなどのサービス業の他、劇場、遊園地、動物園、映画館、展示会などの入場料にかかるVATが5%になるものだ。英ガーディアン紙によると、これにより15万もの事業が恩恵を受けるという。
さらに、8月の月~水曜日を対象に、レストランやカフェでの食事が半額割引(割引額は最大10ポンド)になる食事代補助政策、「イート・アウト・ヘルプ・アウト」も行われる。登録された外食産業で食事をした人は代金を半額にしてもらえ、事業側は政府にその分を請求できるという仕組みだ。しかしここでもまた、アルコールは対象外だ。
アルコールがことごとく景気支援策から対象外とされたことに、パブ業界は衝撃を受けている。2019年に行われた同業界の調査報告書によると、英国のパブのうち64%は、食事よりもアルコールの売り上げの方が多く、事業を支えているのはアルコールなのだ。
イングランド南西部でパブを3軒経営しているエドワード・アンダーソンさんはガーディアンに対し、現在5万ポンド(約675万円)の家賃の負債を抱えていると打ち明けた。アルコールが今回の支援策に含まれていたら、家賃を完済できたのに、と肩を落とす。パブは地域社会の一部であり、救済措置から外すなんてあり得ない、とアンダーソンさんは主張する。ガーディアンは、大手パブチェーンからも批判が上がっているとしている。