イギリス パブを再開しても、ビールは大量廃棄
さらに追い打ちをかけるのが、突然ロックダウンが始まったことにより消費されなかったビールの廃棄だ。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、パブで提供される樽に入ったビールの消費期限は、ビターは3週間、ラガーは6週間。ロックダウンの発表から実施までの期間が短かったため、ほとんどのパブで、栓を開けないまま消費期間が切れてしまった。
栓を開けずに消費できなかったビールのコストについて、FTによると、中にはハイネケンのように無料で交換するというメーカーもあるが、ギネスやカールスバーグなどはパブ側の全額負担としているという。
英公共放送BBCによると、英国の水道会社には、こうしたビールを廃棄するために、下水に流したいという申請がパブやバーから殺到している。英国の中部および南西部を管轄する水道会社セバーン・トレントは350万リットル、ロンドンを中心にした地域を管轄するテムズ・ウォーターは300万リットルをこれまでそれぞれ許可している。
イングランド南西部グロスタシャーにあるパブ「ザ・チューダー・アームズ」では1500パイント以上のビールを廃棄することになり、「胸が張り裂けるようだ」とBBCに話したという。
英国文化パブの行方は?
米経済誌フォーブスは、前述のパブの受難に加え、英国の若者の間ではパブ離れが進んでいるため、パブ文化が終わりを迎える可能性があるとしている。
英国では、大人と一緒であり、食事と一緒であれば16歳から自宅などでビールやワインが飲めるようになる。しかしフォーブスによると、16~24歳の25%は飲酒せず、親の世代がパブに愛着を抱くようにはパブを捉えていないのだという。フォーブスはさらに、英国統計局(ONS)の数値を引用し、パブの数は2001年の5万2500軒から減少しているとも指摘する。
とはいえ、ONSの最新の数値(今年1月発表)によると、パブの軒数は2019年、3万9130軒となり、前年の3万8815軒から微増した。また、パブの雇用者数も45万7000人となり、前年の45万人から増加している。ONSによると、小規模のバーとパブの軒数は15年以上減少を続けていたが、2019年に0.4%増となった。バーとパブ全体としては、前年比0.8%増となり、10年ぶりに増加に転じたという。
しかし今回の景気支援策でアルコールが除外されたことにより、せっかくのパブ軒数の微増もまた減少に転じる可能性は大いにある。