コロナ恐慌がバイデンを変えた......目覚めた「眠そうなジョー」はルーズベルトを目指す
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一方、一部の共和党関係者は、バイデンが大型支出を伴う政策を次々と打ち出しているのを見て、ほくそ笑んでいる。大きな政府路線を採用したことでバイデンは墓穴を掘った、と考えているのだ。
しかし、いま経済的苦境にあえいでいる国民は、こうした昔ながらの保守派の経済思想を聞きたいわけではないと、トランプの元盟友で、現政権のホワイトハウス広報部長を務めたこともあるアンソニー・スカラムッチ(ヘッジファンド運営会社スカイブリッジ・キャピタルの創設者でもある)は言う。
ジェローム・パウエルFRB(連邦準備理事会)議長が5月半ばの講演で指摘したように、世帯所得が4万ドルを下回る世帯の40%が新型コロナウイルス危機で3月に職を失った。スカラムッチは、この講演でパウエルが述べた言葉を引用する。「追加の財政出動には大きなコストが伴う可能性があるが、長期の経済的ダメージを回避し、より力強い景気回復を成し遂げる効果があるなら、実行する価値がある」という言葉だ。
「(誰が経済政策を担うことになっても)第2次大戦期に匹敵する巨額の財政支出を行うことになる」と、スカラムッチは言う。「それ以外の選択肢はない。しばらくの間は、政府が国民に金を配ることになるだろう。いわば、ヘリコプターからお金をばらまかなくてはならない。暴動を防ぐにはそれが不可欠だ」
だがバイデンが11月の本選で勝つためには、民主党予備選で打ち負かした党内左派に対し、財政拡大と大きな政府の支持者に宗旨替えしたことを納得してもらう必要がある。
バイデンは「もっと大胆に動くべきだし、そう望んでいる」と、サンダース陣営の選対本部長からバイデンの医療政策チームのメンバーに転じたファイツ・シャキールは言う。「(バイデンが)ルーズベルトに言及するのは、リベラル色の強い大統領になりたいという意向の表れだ」
バイデンの中道派としての評価は、36年間の上院議員時代に築かれた。世論調査分析サイトのファイブサーティーエイト・ドットコムが上院での過去の投票行動を集計したところ、民主党議員の少なくとも44%よりはリベラル寄りだったが、彼よりもさらにリベラル寄りの民主党議員は少なくとも43%いた。それを考えれば、3カ月足らずで大きな変容を遂げるとは思えないという疑念が生じるのも無理はない。
左派が支持をためらう理由はほかにもある。バイデンは長い間、共和党との合意点を探ることにたけた財政規律派の上院議員として知られてきた。この評価は初めて大統領選出馬を表明した1987年、財政赤字と政府債務に反対したときまでさかのぼる。
1988年の選挙で、当時44歳のバイデンは地元デラウェア州のウィルミントン駅で、2つの道のどちらを選ぶのかを通勤客に問い掛けていた。「子供たちの未来を先食いすることで、軽薄な偽りの繁栄を享受する安易な道か。子供たちが生まれながらに持つ権利を守る一方で、真の繁栄を自力で築くもっと困難な道か」
以前は否定していた大胆な財政支出も辞さないと言うなら、やらせてみる価値はあると、シャキールは言う。「バイデンが民主党の候補指名を勝ち取ったのは、強固な政策基盤があったからではない。トランプとの差別化を際立たせる政策案を取り入れる余地は十分にある」