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コロナ恐慌がバイデンを変えた......目覚めた「眠そうなジョー」はルーズベルトを目指す

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2020年7月9日(木)19時45分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

一方、デューク大学の経済学者サンディ・ダリティは懐疑的だ。ルーズベルトは政府による雇用プログラムを提案し、預金を連邦政府が保障することで金融制度への信頼を回復させ、社会保障制度を創設した。それに比べると、現時点でバイデンの提案は「やや地味」だと、ダリティは指摘する。一定の歳出増や労働・銀行規制の強化などはあるが、左派が主張する国民皆保険(メディケア・フォー・オール)や連邦政府による雇用保障のような画期的政策は見当たらない。

トランプとの違いを明確化

バイデンがルーズベルトを引き合いに出すのは、特定の政策を支持するかどうか以上に、ルーズベルトのように極限の危機の中で人々に希望を与えるリーダーになるという意味なのではないかという見方もある。

バイデンにはそうなれる可能性があると、助言役のバーンスタインは考えている。ルーズベルトの存在は、現状がどれほど深刻で多くの人々に影響を与えるかを示す、一種のひな型だという。

従来の立場と大きく違うバイデンの左派的な政策案は、3Rと呼ばれるニューディールの政策理念──救済(Relief)、回復(Recovery)、改革(Reform)── を取り入れたものだ。それをバイデンが支持すること自体、深刻な現状認識とそれに挑もうとする意欲を示唆していると、バーンスタインは言う。

「彼は今と同様の経済的大混乱から抜け出したルーズベルトを振り返り、回復力のある経済への変容を実現するための教訓を学ぼうとしている」

元はエリザベス・ウォーレン上院議員を支持していた左派活動家のヘザー・マギーも、パンデミックがもたらした心の痛みと、その結果として生じた物理的・経済的苦境からアメリカ人が立ち直るのを助ける役割をバイデンに期待している。

ルーズベルトは1930年代のラジオ演説「炉辺談話」で国民を直接励まし、大統領と国民の関係に革命を起こした。バイデンも毎日オンラインで有権者に語り掛けるべきだと、マギーは言う。

最近のバイデンは感動的なメッセージよりも失言が目立つ。だが、かつては雄弁な演説で称賛された時期もあった。「次期大統領候補としてのビジョンを提示することが極めて重要だ」と、マギーは指摘する。

「トランプが語ろうとしない物語を語り、トランプが拒否したやり方で人々の悲しみに寄り添い、あらゆる点で違いを明確に説明する。今のバイデンはまだ、人々に希望を与える日常的存在ではない。それができれば、アメリカ人はトランプに背を向け、こちらを向くはずだ」

マギーも多くの左派と同様、バイデンの中で何かが根本的に変わり、リーダーとして課題に挑戦する意思を明確にすると信じたがっているようだ。最後に彼女はこう言った。「ルーズベルトも時代の要請が彼を変えるまで、ルーズベルトらしく話していなかった」

<2020年7月14日号掲載>

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