最新記事

2020米大統領選

コロナ恐慌がバイデンを変えた......目覚めた「眠そうなジョー」はルーズベルトを目指す

CHANNELING FDR

2020年7月9日(木)19時45分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

magf200709_Biden2.jpg

食料を配るフードバンクのスタッフ(フロリダ州) PAUL HENNESSY-NURPHOTO/GETTY IMAGES,

中道派として知られてきたバイデンにとっては、方針の急転換と言っていい。この背景にはサンダース支持者を取り込みたいという思惑もあっただろうが、米国民の生命と雇用に甚大なダメージを及ぼしたコロナ危機を目の当たりにすれば、考え方が大きく変わっても不思議はない。

このような状況で小手先の対策を打っても意味がない。「(バイデンは)経済の停止状態を利用して、経済の在り方を変容させられないかと考えている」と、ティム・ライアン民主党下院議員は言う。

「変容」という言葉は、バイデンの選挙運動の合言葉になりつつある。新型コロナウイルス問題で浮き彫りになった社会と経済の深い亀裂を解消すべきだという考え方は、選挙運動の主要テーマになっているのだ。

バイデンは、世帯所得12万5000ドル未満の家庭を対象にした4年制大学の授業料無償化、低・中所得層向けの学生ローン返済免除(公立大学および歴史的に黒人学生の多い私立大学に通った人が対象)、連邦政府の学生ローン債務の少なくとも1万ドルの免除(これは全ての人が対象)などを主張している。

ニューディール政策を手本にした「雇用保険プログラム」の導入も提案している。これは、新型コロナ危機のような緊急事態により一時解雇を言い渡されたり、勤務時間を減らされたりした人を対象に連邦政府が給料と医療保険料を負担する制度だ。

これ以外にも、既にいくつかのリベラルな経済政策を発表している。連邦法定最低賃金を時給15ドルに引き上げること、低所得地域の学校への連邦政府の支援を3倍に増やすこと、低所得者向けの住宅支援を充実させることなどを訴えている。

世論は「大きな政府」に傾斜

バイデンにとっての問題は、経済の立て直しには自分のほうが適任であると、まだ有権者に納得させられていないことだ。

5月後半にクィニピアク大学が行った世論調査によれば、経済運営の手腕への信頼度では、バイデンとトランプがほぼ互角だった(ヘルスケア政策への信頼度では、バイデンが20ポイントリードしていた)。失業率が大幅に上昇し、経済が停滞しているにもかかわらず、現職を大きく引き離せていないことは、挑戦者にとって好ましい結果とは言えない。

それでも、国民は少なくとも現時点で、思い切ったニューディール型の政策を受け入れているようだ。

この点は、世論調査の結果にも見て取れる。4月半ばに左派系のグラウンドワーク・コラボラティブが行った世論調査では、「新型コロナウイルスの経済的影響に対処するために、連邦政府は大規模で抜本的な行動を取るべきだ」という考え方に、回答者の71%が賛同した。

こうした世論の動向について、党派的な見方をする人もいる。バイデンの助言役であるバーンスタインに言わせると、新型コロナウイルス問題を機に、国民はトランプの経済運営への評価を変え始めたという。好景気が「砂上の楼閣」だったことがはっきりしたというわけだ。

【関連記事】トランプvsバイデン、それぞれが抱える選挙戦の課題

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中