コロナ恐慌がバイデンを変えた......目覚めた「眠そうなジョー」はルーズベルトを目指す
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中道派として知られてきたバイデンにとっては、方針の急転換と言っていい。この背景にはサンダース支持者を取り込みたいという思惑もあっただろうが、米国民の生命と雇用に甚大なダメージを及ぼしたコロナ危機を目の当たりにすれば、考え方が大きく変わっても不思議はない。
このような状況で小手先の対策を打っても意味がない。「(バイデンは)経済の停止状態を利用して、経済の在り方を変容させられないかと考えている」と、ティム・ライアン民主党下院議員は言う。
「変容」という言葉は、バイデンの選挙運動の合言葉になりつつある。新型コロナウイルス問題で浮き彫りになった社会と経済の深い亀裂を解消すべきだという考え方は、選挙運動の主要テーマになっているのだ。
バイデンは、世帯所得12万5000ドル未満の家庭を対象にした4年制大学の授業料無償化、低・中所得層向けの学生ローン返済免除(公立大学および歴史的に黒人学生の多い私立大学に通った人が対象)、連邦政府の学生ローン債務の少なくとも1万ドルの免除(これは全ての人が対象)などを主張している。
ニューディール政策を手本にした「雇用保険プログラム」の導入も提案している。これは、新型コロナ危機のような緊急事態により一時解雇を言い渡されたり、勤務時間を減らされたりした人を対象に連邦政府が給料と医療保険料を負担する制度だ。
これ以外にも、既にいくつかのリベラルな経済政策を発表している。連邦法定最低賃金を時給15ドルに引き上げること、低所得地域の学校への連邦政府の支援を3倍に増やすこと、低所得者向けの住宅支援を充実させることなどを訴えている。
世論は「大きな政府」に傾斜
バイデンにとっての問題は、経済の立て直しには自分のほうが適任であると、まだ有権者に納得させられていないことだ。
5月後半にクィニピアク大学が行った世論調査によれば、経済運営の手腕への信頼度では、バイデンとトランプがほぼ互角だった(ヘルスケア政策への信頼度では、バイデンが20ポイントリードしていた)。失業率が大幅に上昇し、経済が停滞しているにもかかわらず、現職を大きく引き離せていないことは、挑戦者にとって好ましい結果とは言えない。
それでも、国民は少なくとも現時点で、思い切ったニューディール型の政策を受け入れているようだ。
この点は、世論調査の結果にも見て取れる。4月半ばに左派系のグラウンドワーク・コラボラティブが行った世論調査では、「新型コロナウイルスの経済的影響に対処するために、連邦政府は大規模で抜本的な行動を取るべきだ」という考え方に、回答者の71%が賛同した。
こうした世論の動向について、党派的な見方をする人もいる。バイデンの助言役であるバーンスタインに言わせると、新型コロナウイルス問題を機に、国民はトランプの経済運営への評価を変え始めたという。好景気が「砂上の楼閣」だったことがはっきりしたというわけだ。