最新記事

2020米大統領選

コロナ恐慌がバイデンを変えた......目覚めた「眠そうなジョー」はルーズベルトを目指す

CHANNELING FDR

2020年7月9日(木)19時45分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

magf200709_Biden3.jpg

テキサス州で野外生活を強いられる大恐慌時代の家族(1937年) DOROTHEA LANGE-RESETTLEMENT ADMINISTRATION-THE LIFE PICTURE COLLECTION/GETTY IMAGES,

今年2月末のサウスカロライナ州の予備選でサンダースを下した際は、「革命について語っても誰の生活も変えられない」と勝利宣言をしたバイデン。その彼が5月半ばには自身のポッドキャスト番組で「革命的な制度改革が必要だ」と言い切った。

近頃のバイデンがよく引き合いに出す歴史的な危機は2008年の金融危機ではない。1930年代の大恐慌だ。しかもインタビューや演説、ポッドキャストで最も頻繁に言及する指導者はもはやバラク・オバマ前大統領ではない。今のバイデンが目指すのはフランクリン・ルーズベルトだ。

バイデンは「大恐慌時の混乱に現在の状況を重ね、危機における政策課題を考えている」と、オバマ前政権で2009〜11年に副大統領首席経済顧問を務め、現在も非公式にバイデンの助言役を務めているジャレッド・バーンスタインは言う。

経済システムを変える機会に

いま求められているのは大胆な行動であり、大恐慌時代のルーズベルトのような指導者、つまり人々の痛みを理解し、人々に希望を与える指導者だ。バイデンはそう見抜いているのだろう。問題は、彼に「自分こそはその指導者だ」と有権者を説得するすべがあるのかどうかだ。

民主党のテレビ討論会では失言を連発して支持者をハラハラさせたバイデン。政策作りよりも、政策をどう伝えるかに手を焼きそうだ。5月下旬にはラジオ番組の黒人司会者相手に「私かトランプか投票を迷うようなら、きみは黒人じゃない」と言って大ひんしゅくを買ったばかり。外出制限で遊説できなくなったのは、口下手候補にはむしろ幸いだった。

今後選挙戦が本格化し、さらには大統領選に勝利したら、バイデンは国民に語り掛けるスキルを磨くか、さもなければ国民が失言を許してくれるのを期待するしかない。

最新のデータが語る米経済の見通しは厳しい。商務省経済分析局によると、今年第1四半期にGDPは年率4.8%縮小。議会予算局によれば下半期には回復が見込めるが、第2四半期には年率40%も縮小する。

4月の失業率は大恐慌以降では最悪の14.7%に上ったが、労働統計局によれば、働いていなくても就業者と見なされる「隠れ失業者」を加えれば20%以上に上る。これはルーズベルトが大統領に就任した1933年の史上最悪の失業率24.9%に迫る数字だ。下半期には改善するにせよ、大統領選の投票日まで2桁台にとどまるだろうと、トランプの経済顧問はみている。

バイデン(本誌による数度のインタビュー要請に応じていない)は5月に行った演説で、失業保険制度の改革、有給休暇と育児支援の提供、高等教育と良質な医療を受ける機会の保障、公正な賃金を確保するための措置の拡充などを打ち出した。これを見る限り、民主党候補として史上最もリベラルな選挙公約を掲げて大統領選に臨むことになりそうだ。

【関連記事】トランプvsバイデン、それぞれが抱える選挙戦の課題

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領、プーチン氏との直接会談主張 明言

ビジネス

ソフトバンクG、1―3月期純利益5171億円 通期

ビジネス

日産、再建へ国内外の7工場閉鎖 人員削減2万人に積

ビジネス

日産社長、ホンダとの協業協議「加速している」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中