インドネシア大統領、怒りの演説に国民は「責任放棄」と不評 注目されたのは内閣改造という誤算
閣僚は笑って応えず
こうした国民の受け止め方は演説の動画を公開したジョコ・ウィドド大統領と大統領府の意図したこととは違うとみられ、「大統領は国民の反応の読みを誤った可能性もある」との見方も出ている。
6日にプラボウォ・スビアント国防相と会談した「内閣改造」で名前の挙がっているアイルランガ調整相は、会談後に記者団から「内閣改造」へのコメントを求められたが、2閣僚とも笑顔をみせながら一切答えず沈黙を守った。
最大与党でジョコ・ウィドド大統領の実質的後ろ盾になっている「闘争民主党(PDIP)」の幹部によると内閣改造はジョコ・ウィドド大統領が密かに画策はしているものの「大統領が辞めさせたいと考えている閣僚と辞めさせることができる閣僚」が必ずしも一致しないという現実に直面していると分析する。
2019年10月に発足した第2期ジョコ・ウィドド内閣には主要政党が推薦した閣僚や政党幹部、さらに国軍、国家警察の元高級幹部、ビジネスリーダーや財界関係者などが抜擢されている。その多様で多彩な顔ぶれには最年少閣僚が35歳(就任当時)という若い世代も含まれ話題を振りまいた。
しかし発足から約8カ月が経過し、コロナ禍という国家的非常事態の中で、閣僚としての手腕、実績、才覚で「玉石混交」が次第に明らかになったこともジョコ・ウィドド大統領の「苛立ち」の背景にあるという。
果たしてジョコ・ウィドド大統領は閣議で言及した内閣改造を断行するのか、するとすれば「いつ、誰を閣外に出す」のか。プラティクノ国家官房長官の必死の火消しにも関わらず、国民の関心は高まる一方である。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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