最新記事

政治

インドネシア大統領、怒りの演説に国民は「責任放棄」と不評 注目されたのは内閣改造という誤算

2020年7月8日(水)20時27分
大塚智彦(PanAsiaNews)

「7月中旬に3人交代説」有力か

「怒れる大統領の火のような激しい演説で閣僚に猛省を促した」とマスコミに報じられた演説については公開直後からその意図を巡っていろいろな憶測が飛んだが、マスコミの関心は「いつ、誰が閣外追放の対象」に集中し、これまでにアイルランガ・ハルタルト経済調整相、ルフット・パンジャイタン海事・投資調整相、テラワン・アグス・プトラント保健相などの名前が「交代候補閣僚」として名前が上がっている。

ただアイルランガ調整相は連立与党の一角を占める「ゴルカル党」の党首であり、同調整相の交代は与党内での新たな緊張と対立を招く危険があるとの見方も強い。さらにルフット調整相は国軍幹部出身で軍出身の他の閣僚による反発も予想されるなど「難しいのではないか」との見方もある。

これに対しテラワン保健相は一向に増加傾向が収まらないコロナ感染者数、感染死者数の「責任」を取らせるには「最適の閣僚」で新大臣の下でさらなるコロナ対策推進のシンボルとなる可能性はある。

ただしこの時期に困難な問題に直接直面して「あえて火中の栗」を拾おうとする後任の保健相が果たしているのかどうか、という問題も浮上しているという。

内閣改造の時期については経済団体の幹部が「7月中旬」に言及しているほか、8月17日のインドネシア独立記念日までには断行される可能性が高いなどの観測もでている。

ネット反応調査では45%が否定的反応

インドネシアの「社会経済教育情報調査機関」は演説が公開された6月28日から7月3日にかけてインターネット上のSNSなどに寄せられた国民の反応、コメントを分析した結果を6日に明らかにした。

それによると大統領演説に関して、インターネットを含めたあらゆるメディアを通じて約6000回の報道、言及、投稿があったとしている。その中にはFace BookやYou Tube,インスタグラム、ツイッターなどが含まれ、合計約63000の反応(コメントやリツイート)があったという。

そしてその約45%が否定的見解を表明し、約35%が肯定的に評価し、約30%が中立的な立場、姿勢を示した、としている。

大統領演説に対する否定的見解には「演説内容の表現が不適切である」「内閣改造は閣僚への脅迫である」「閣僚を批判することは大統領の指導力の欠如の表れである」「大統領の欲求不満」「計画、政策、人材活用が不十分なことを露呈」「大統領としての責任放棄ではないか」などという手厳しい批判が寄せられたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中