香港の挽歌 もう誰も共産党を止められないのか
‘NOBODY CAN SAY NO TO BEIJING’
中国と国際社会の関係を悪化させている要因は、香港だけではない。新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒の弾圧、台湾に対する軍事的圧力、南シナ海への軍事的進出、長年の産業スパイ活動、そして直近の新型コロナウイルスをめぐる不透明な動きまで数え上げればきりがない。
だからアメリカでは、中国への警戒心が超党派で高まっている。大統領選で守勢に立つトランプ陣営は巻き返しのために中国批判のボルテージを上げているし、民主党陣営も「中国に対して弱腰」というイメージの払拭に全力を挙げている。
少しでも希望がある限り
中国政府に対する国際的な批判の高まりに、現地の活動家は意を強くしていると、在米活動家の朱は言う。「香港だけで中国が変わるとは思わない」が、香港の問題を前面に押し出しつつ、その他の問題の「点と点をつないで中国政府の責任を追及することで、中国の本性を暴き出す」のが彼の戦略だ。
そしてもちろん、台湾の問題がある。いわゆる「国共内戦」に敗れて本土を追われた国民党政権が逃げ込んで以来、台湾は70年以上にわたり事実上の独立を維持してきた。
台湾を自国の歴史的な領土と見なす中国政府は、「一つの中国」を掲げ、台湾併合のためには手段を選ばないと公言している。一方、アメリカの軍事力を後ろ盾とする台湾は、香港流の「一国二制度」による本土復帰という提案を拒み続けている。
今年1月の台湾総統選では、現職の蔡英文(ツァイ・インウェン)が再選を果たした。台湾の外交代表としてアメリカに駐在する高碩泰(スタンリー・カオ)に言わせれば、いま香港で起きていることは「一国二制度」が「間違いで、完全な失敗」であることの証しにほかならない。蔡総統自身も5月のツイートで、「香港と普遍的な民主主義の価値」に対する全面的な支援を約束した。対する中国側は、台湾「解放」のためなら軍事的手段を排除しないと繰り返している。
国家安全法の適用を(そして香港の「中国化」を強引に推し進める一連の策動を)食い止めるのは、もはや不可能かもしれない。「私だって未来は暗いと思っている」と言うのは、香港衆志の羅だ。「でも少しでも希望がある限り、私たちはここにいて、抵抗を続ける」
6月4日のビクトリア公園に人影はなかった。だが、人々の心の炎は消えていない。
(編集部注:6月30日、香港衆志は解散を発表。羅も香港を離れたと明らかにした)
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2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。