イラン革命防衛隊のミサイル開発に新事実 アルミ粉末計画の内幕
イランのミサイル開発計画を所管する革命防衛隊の広報室は、ロイターの質問に回答しなかった。ムハンマド・テヘラニ・モガダム司令官にもコメントを求めたが、回答はなかった(計画の詳細を明らかにした元当局者アミル・モガダム氏と司令官は、同姓ではあるが無関係)。ハメネイ師とロウハニ大統領いずれのオフィスからも回答はない。
アミル・モガダム氏がアルミニウム粉末の生産計画を明らかにしたことで、米国政府はイランのミサイル開発に関する調査を強化する可能性がある。現在フランスに住む同氏は、一部の政府官僚による汚職を告発したところ、社会不安を煽ったと非難され、18年にイランを離れた。アルミニウム粉末の生産計画を暴露しようと決めたのは、イランのミサイル開発の野望は国民の利益にならないと考えためただという。
米国はイランに広範な制裁を科している。金属類の生産や弾道ミサイル開発計画も対象で、アルミニウム製造や関連取引の制限も含まれている。革命防衛隊そのものや、革命防衛隊と取り引きしたり支援をする第三者も制裁対象だ。制裁の運用に当たっては、米財務省が中心的な役割を果たしている。
軍事目的のアルミニウム粉末生産が制裁違反に該当しうるか財務省に問い合わせたところ、報道官は「潜在的に制裁対象となりうる行為についての報告はすべて真剣に受け止めている」と回答。調査を行う可能性についてはコメントしなかったが、「我々の管轄範囲内で、イランの現体制と世界各地における彼らの悪質な行動を支援する者を制裁対象とすることにも注力している」と述べた。
国連は、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルに関するイランの活動については制裁対象としている。国連の報道官は、アルミニウム粉末生産活動が制裁違反に相当するかどうかは明らかではないと回答した。
爆発性の物質
ロンドンのシンクタンク、国際戦略研究所のマイケル・エルマン氏は、固体燃料ミサイルの推進剤に使うアルミニウム粉末を内製できるようになれば、サプライチェーンと品質を管理しやすくなると指摘する。
ロイターが検証した文書によると、ジャジャームの施設を運営するのはイラン・アルミナ・カンパニー(IAC)。IACは国営の鉱山・金属持株会社であるイラン鉱山鉱業開発機構の子会社だ。
IACがロイターの質問に回答することはなかったが、同社のホームページには、ジャジャームの北東約10キロに位置する施設群でボーキサイト鉱床とアルミニウム生産施設を運用していると記載されている。ボーキサイトを処理して得られるアルミナが、アルミニウムの原料となる。そのアルミニウムから粉末が作られる。
アルミニウム粉末は、塗料や電子部品、太陽光パネル、花火といったさまざまな製品に使われる。爆発性の物質であるため、ロケットやミサイルの発射に使う固体燃料推進剤の主要成分でもある。酸素を含む物質と混合すると、膨大なエネルギーを放出する。
英政府は2010年、調達物品を軍事転用する可能性があると思われるイラン企業のリストにIACを登録した。イラン企業との取引を考えている商社に対し、輸出許可を申請が必要になるかもしれないと警告するためのリストだ。リストは17年、国連と欧州連合(EU)がイランへの制裁を解除したことで撤回された。
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