イラン革命防衛隊のミサイル開発に新事実 アルミ粉末計画の内幕
イランのアルミニウム粉末製造計画について、ロイターに情報提供した元当局者のアミル・モガダム氏。写真はロウハニ大統領の国内視察に随行した際のモガダム氏。アラクの空港で撮影。撮影日不明(2020年 モガダム氏提供)
イラン北東部、北ホラーサーン州の砂漠の端に、アルミニウム工場が建っている。近くには国内最大のボーキサイト鉱床。イラン政府はこの施設群について、アルミニウムの生産拡大に向けた取組みの重要な柱とうたっている。
ところがジャジャーム近郊のその敷地内には、イランの精鋭治安部隊であるイスラム革命防衛隊が建設した極秘の施設も存在する。
イラン政府の元当局者、そしてこの人物がロイターに提供した施設に関する文書によると、ここで生産されているのは革命防衛隊のミサイル計画に用いるアルミニウム粉末。ボーキサイトから製造されるアルミニウム粉末は、固体燃料ミサイルの推進剤の主要成分だ。
この元当局者アミル・モガダム氏によれば、イランが軍事用アルミニウム粉末の製造を開始したのは5年以上前。2013年から18年に行政担当副大統領のオフィスで広報業務に従事し、議会対応の窓口役も担った彼は、ほとんど知られていないこの施設を2回訪れたことがある。18年にイランを離れた後も生産は続いていると、モガダム氏は言う。
ミサイルに用いるアルミニウム粉末をイランが生産していることは、これまで報じられていない。国際的な制裁下、兵器の先進技術の獲得が難しくなるなかで進められてきたものだ。米国とその同盟国は、イランのミサイル能力が中東、そして世界全体にとって脅威になると考えている。
ロイターはこのほど、2011年から18年に作成されたアルミニウム粉末生産計画に関する10数点の文書を検証した。そうした文書の1つが、革命防衛隊の司令官かイランの最高指導者ハメネイ師に宛てられた書簡だ。この司令官の兄弟には、同国のミサイル開発計画の父と称えられる人物がいる。
ムハンマド・テヘラニ・モガダム司令官(当時)は書簡のなかで、ジャジャームの施設を「金属粉末からミサイル燃料を生産するプロジェクト」と表現し、「ミサイル固体燃料生産の自給率を高める」うえで重要な役割を担っていると書いている。書簡に日付はないが、中で言及されている出来事から考えると、2017年以降のものとみられる。
ニューヨークのイラン国連代表部に問い合わせたところ、アリレザ・ミリューセフィ報道官は、「これらの主張について、また文書の真正性については何ら承知していない」と回答した。
「イランが核弾頭や核を搭載するミサイルを製造しようという意図を持ったことは一度もないことを強調しなければならない」と、同報道官は語った。イランはかねてから、ミサイル開発計画は防衛目的に限ったものだと主張している。
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