日本が中国と「経済的距離」を取るのに、今が最適なタイミングである理由
DECOUPLING FROM CHINA
コロナ禍の今は日本が中国離れする絶好の機会?(G20大阪サミット、2019年) KIMIMASA MAYAMAーPOOLーREUTERS
<日本企業にとって中国からのサプライチェーン移転は、米企業が行うより容易だ。本誌「中国マスク外交」特集より>
緊急経済対策の一環として、2435億円を計上し、日本企業が製造業のサプライチェーンを中国から移転させることを促す──安倍政権のこの政策が成功するのかは、まだ分からない。コロナ禍で経済のあらゆる主要分野が影響を受けるなか、なぜそうした方針を進めるのか? サプライチェーンを中国からデカップリング(切り離し)することはうまくいくのか? そして、2019年から始まった中国の対日歩み寄りの動きをなぜ危険にさらすのだろうか?
日本の方針が賢明なのか非生産的なのかはまだ判断できないが、その狙いとタイミングは最適だ。
アメリカを見てみれば、中国からのサプライチェーンの国内回帰促進は、大した効果を上げていない。17年末の法人税減税によって、米企業は国外に積み上げてきた利益を国内に戻すようになり、18年の1年間だけでも約7800億ドルの資金がアメリカに戻った。だがその大部分は、国内のサプライチェーン構築への投資ではなく、自社株購入や配当金の増額に使われた。
実際のところ、国際企業は中国の政治上、制度上、法律上のリスクなどずっと前から織り込み済みだ。そうしたリスクも、短期的利益によって相殺されてきた。中国市場に足場を築くには、中国のサプライチェーンを抱えることが欠かせないのだ。
だが日本企業の場合は、今回の政策を好機に思いがけない成果を呼び込めるかもしれない。まず、アメリカより日本のほうが地理的に有利だ。東アジアは製造業の統合地域圏として世界で台頭しつつある。コンピューター、電子機器、電気製品分野で最も顕著で、こうした分野は日本や韓国、ASEAN諸国の輸出額のかなりの部分を占める。日本企業がサプライチェーンを中国から国内へ(あるいは東南アジアへ)移転させても、統合地域圏内にいることは変わらない。この事実は、米企業に比べて移転の決断を容易にする。