日本が中国と「経済的距離」を取るのに、今が最適なタイミングである理由
DECOUPLING FROM CHINA
さらに、ロボット化や自動化、人工知能(AI)や3Dプリンターといった製造業関連技術の急速な発展(これらは全て日本企業が重点的に投資してきた)により、労働力の必要性もコストも下がり、製造に必要な土地面積さえ縮小している。これは、人口減少が進むが技能を持つ人が多く、国土面積の小さい日本に適した状況だ。
市場にアクセスしたいなら製造拠点も中国にとどめろ、と中国が圧力をかける可能性もあることは考慮しておく必要がある。だがデカップリングとまではいかなくとも、中国離れを図り多様化を推進することは、日本企業にとって十分考えられる。
2つ目に、タイミングについてだが、コロナ禍は地域のサプライチェーンも世界的サプライチェーンも破壊した。需要の減少もあり、フル稼働で生産に追われる緊急性もない今、サプライチェーンの見直しに乗り出すには最良のタイミングだ。
3つ目に、政治的環境も日本政府の政策を後押しする。中国のサプライチェーンに依存する日本企業は今後、米政府の対中経済制裁の標的にされる可能性がある。その前に先手を打っておくのが賢明だろう。
さらに言えば中国は既に、悪化する対米関係で手いっぱいだ。コロナ禍が一息つけば米中の緊張はさらに高まるだろう。中国と「経済的距離」を置く日本の戦略になど構っていられないはずだ。
From the-diplomat.com
<本誌2020年6月30日号「中国マスク外交」特集より>
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2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?