最新記事

中国マスク外交

日本が中国と「経済的距離」を取るのに、今が最適なタイミングである理由

DECOUPLING FROM CHINA

2020年6月25日(木)18時39分
ジョン・リー(米ハドソン研究所上級研究員)

さらに、ロボット化や自動化、人工知能(AI)や3Dプリンターといった製造業関連技術の急速な発展(これらは全て日本企業が重点的に投資してきた)により、労働力の必要性もコストも下がり、製造に必要な土地面積さえ縮小している。これは、人口減少が進むが技能を持つ人が多く、国土面積の小さい日本に適した状況だ。

市場にアクセスしたいなら製造拠点も中国にとどめろ、と中国が圧力をかける可能性もあることは考慮しておく必要がある。だがデカップリングとまではいかなくとも、中国離れを図り多様化を推進することは、日本企業にとって十分考えられる。

2つ目に、タイミングについてだが、コロナ禍は地域のサプライチェーンも世界的サプライチェーンも破壊した。需要の減少もあり、フル稼働で生産に追われる緊急性もない今、サプライチェーンの見直しに乗り出すには最良のタイミングだ。

3つ目に、政治的環境も日本政府の政策を後押しする。中国のサプライチェーンに依存する日本企業は今後、米政府の対中経済制裁の標的にされる可能性がある。その前に先手を打っておくのが賢明だろう。

さらに言えば中国は既に、悪化する対米関係で手いっぱいだ。コロナ禍が一息つけば米中の緊張はさらに高まるだろう。中国と「経済的距離」を置く日本の戦略になど構っていられないはずだ。

From the-diplomat.com

<本誌2020年6月30日号「中国マスク外交」特集より>

【話題の記事】
傲慢な中国は世界の嫌われ者
「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告
「深センすごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営者が語る
木に吊るされた黒人男性の遺体、4件目──苦しい自殺説

20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中