「うまくいけば、晩秋か初冬には有効性」ファウチが見据えるワクチン開発の道筋
12月までに十分な量のワクチンを用意できる可能性も? LEAH MILLIS-REUTERS
<米国立アレルギー・感染症研究所ファウチ所長が語る、新型コロナワクチン開発の見通しと人類の未来>
新型コロナウイルスの感染者数が世界で累計650万人を突破した。早期のワクチン実用化を期待する声は高まるばかりだ。
そこで、ワクチン供給までの時間を短縮する試みが実践されそうだ。トランプ米政権の新型コロナウイルス対策チームを率いるアンソニー・ファウチ国立アレルギー・感染症研究所所長は、本誌に次のように語っている。
有効性が確認されるのを待たずに、ワクチンの生産を開始することになるだろう。そうすることにより、数カ月時間を節約できる。
2021年の初めまでに、予防接種で数億回分のワクチンを用意したいと、ファウチは最近、米国医師会報(JAMA)のYouTubeチャンネルで述べている。11月か12月までには、1億回分近くのワクチンを供給できる可能性があるとのことだ。
有効性が確認される前に生産を開始すれば、お金の面でのリスクが避けられない。ファウチは以前、本誌にこう語ったことがある。
もしワクチンに効果がないと分かれば、巨額の投資が無駄になるだろう。そうしたリスクは見過ごせないが、緊急性を考慮すれば、それを覚悟の上で前に進むべきだと思う。
12月までに十分なワクチンを用意できるかもしれない
ワクチン開発の実際の見通しはどうなのか。
うまくいけば、晩秋か初冬には有効性が見えてくるだろう。もちろん、効果がないという結果になる可能性も十分過ぎるくらいあるが、有効性と安全性が確認できれば、12月までに十分な量のワクチンを用意できるという見通しは非合理ではない。
アメリカでは3月に、バイオテクノロジー製薬企業のモデルナが開発したワクチン候補の臨床試験(治験)が始まっている。第1相の臨床試験で得られたデータは極めて有望なもので、臨床試験は既に第2相に移行した。7月第1週に第3相へ進むことを目指している。
ファウチがJAMAのYouTubeチャンネルで語ったところによると、第3相の臨床試験は3万人を対象とし、高齢者や基礎疾患のある人も対象に含めるとのことだ。
新型コロナウイルスの感染流行は来年も続くのか。ファウチは本誌に言う。
そうなるだろう。複数シーズンにわたって流行が続いたとしても全く不思議でない。ただし、2シーズン目は1シーズン目に比べて、かなり軽いものになる可能性も高い。とりわけ、ワクチンが実用化されればその期待が高まる。
次の冬までにワクチンが実用化されれば局面が一変するだろうが、うまくいく保証は一切ない。それでも、その次のシーズンまでには間に合うかもしれない。