中国・全人代、初の民法典を可決 同性カップルの居住権に「救いの手」
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中国全人代で、個人の所有権の保護を改善しようとする中国初の「民法典」が可決され、同性カップルが所有権を主張できる希望が生まれた。写真は2018年7月、江蘇省淮安で撮影(2020年 ロイター)
「不意打ちだった」──。ヒー・メイリさん(51)は、亡くなった同性の女性パートナーの義父母に警察署で面会したとき、パートナーと12年間一緒に暮らしたアパートの立ち退きを求められたと述懐する。
「自分は法に守られていないのだと痛感したのは、警察署でのあの瞬間だった」と、ロイターに語った。
死について口にすると死期が早まると信じていたパートナーのリー・シンさんは生前、遺書を書いておらず、不動産の所有権をはっきりと話題にすることもなかった。
2016年にリーさんが難病の全身性エリテマトーデスで亡くなると、中国南部の広州市にあるアパートは法律上の最近親者である義父母が相続し、ドアにはすぐに立ち退き通告が貼られた。
中国の法律は同性愛関係を禁じてはいないが、認めてもいない。このため法的な争いになると、ヒーさんとリーさんのようなカップルは寄る辺のない状態に置かれる。
しかし、全国人民代表大会(全人代=国会)で28日、個人の所有権の保護を改善しようとする中国初の「民法典」が可決され、同性カップルが所有権を主張できる希望が生まれた。1260におよぶ条項の中には「居住権」も盛り込まれている。
これにより不動産の所有者は、別の個人に一定期間もしくは終生、その不動産に住む権利を与えることが可能になる。家族が異議を申し立てることができる遺書に比べ、法的保護ははるかに厚い。
上海の弁護士、シャン・シアンリン氏は「民法典は、居住権を与えられる人々について親族関係や性といった制限を設けていない」とし、理論上は同性カップルにも適用されると説明した。
「LGBTコミュニティーにとって、福音になるかもしれない」とヒーさんは言う。故郷の広西チワン族自治区からリベラルな大都市である広州市に出てきた彼女は、制度の関係で同市に戸籍がないため、市内でアパートの共同所有が禁じられていた。