最新記事

中国社会

中国・全人代、初の民法典を可決 同性カップルの居住権に「救いの手」

2020年6月5日(金)15時35分

進歩、だが心配も

しかし、「居住権」の実際の運用を巡っては、実際に機能するのかどうか懸念が残る。

2021年1月1日に発効する民法典は、憲法の次に強い法的効力を持つが、その性質は概括的だ。このため中央政府の司法当局が後日、地方当局の司法官に執行の指針を示すことになっている。

同性カップルは「居住権」に守られる、と指針に明記されるかどうかは不明で、文言が曖昧な場合には無視する地方当局が出てくるかもしれない。

不動産法を専門とする弁護士、ヤン・ジャンウェイ氏は「同性カップルの所有権が守られるかどうかは、予断を許さない」と言う。

それでも中国のLGBTコミュニティーの一員である広州市のペン・ヤンフイさん(36)は今のところ、民法典の成立に興奮している。

地元生まれの彼は、パートナーのヤン・イーさん(31)のことが心配だ。

ヤンさんは、2人が住む50平方メートルの市内アパートで頭金を全部出してくれるなど、かかった費用をほとんど負担してくれたが、甘粛省出身なので制度上、共同所有ができない。

共同生活は至福だと言うペンさん。「だけど非常に危なっかしくもある。アパートは僕のもので、僕に何かあれば法的には所有権は僕の両親に行く」。ペンさんが自身の性的指向について両親と話をしたことはない。

ペンさんによると、民法典の成立は進歩だが、LGBTコミュニティーにとって究極の目標は、同性カップルにも中国の法律上、結婚の法規が適用されることだ。「どんな司法官でも結婚と言えば意味は分かる。それなら説明は不要だ」

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染28人 4日連続で2桁台
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・イギリス、新型コロナ死者5万人突破 世界で2番目の多さ
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200609issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中