コロナ危機が示した台湾の生き残り戦略
How Taiwan Can Turn Coronavirus Victory into Economic Success
コロナ対応で得た評価と信用は、中国に対抗する上でも大きな力になる。写真はマスク姿で軍事演習を視察する蔡総統 Ann Wang-REUTERS
<サプライチェーンの「脱中国化」が進む今なら、中国にない透明性と信用を武器に、バイオ医療などの先端分野で確固たる地歩を築ける>
台湾は新型コロナウイルスのパンデミックへの迅速かつ高度に効率的な対応で世界から高い評価を受けた。6月1日時点で、台湾(人口2400万人)の確認感染者は443人、死者は7人にすぎない。プロ野球の試合も観客を入れて行われている。中国との人の往来が活発な台湾は感染が大きく広がると予測されていたが、見事に封じ込めに成功した。
成功のカギは、公共・民間部門の効率的な連携と技術の革新的な活用だ。これはそのまま、今後数十年にわたる着実な経済成長のレシピともなる。
もちろん2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行を教訓にしたことも成功の1因だ。しかし最大の要因は、人工知能(AI)とビッグデータの解析技術をフル活用したこと。それによって医療保険データと出入国管理データを統合でき、インバウンドの旅行者の感染リスクを正確に評価できた。加えて、スマートフォンのアプリ活用による濃厚接触者の追跡と強制隔離も封じ込めに威力を発揮した。
「5プラス2」計画
技術を強みにパンデミックの第1波を乗り越えた台湾だが、次なる課題は、この強みをコロナ後の経済成長と国際競争力の強化にどう生かすかだ。パンデミックを契機に、各国の政府と企業の公衆衛生に対する認識が変わり、不可欠な財とサービスのリストも変わった。賢明な投資戦略と経済政策を採用すれば、台湾はバイオ医療と製薬の分野で地域のリーダーになれる可能性がある。
中国は今後、国際社会において台湾を孤立させる戦略をさらに強引に進め、台湾経済への締め付けも強めるだろう。そのため先端技術を中心としたソフトパワーの強化は、台湾の生き残りを賭けた課題ともなる。
蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる台湾政府は、バイオ医療を柱の1つに据えた「5プラス2産業イノベーション政策」を打ち出している。AI、再生可能エネルギー、ハイテク農業なども重点分野に含まれ、この計画の一環として、政府はバイオ医療の研究開発や付加価値の高い医薬品産業などへのテコ入れを進めている。
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