コロナ危機が示した台湾の生き残り戦略
How Taiwan Can Turn Coronavirus Victory into Economic Success
台湾の強みはデータ解析だけではない。台湾はエネルギー資源の約98%を輸入に頼っている。台湾経済は中東など政情不安定な地域から流入する化石燃料に支えられているのだ。この状況を改善するにも、先端技術への投資が鍵を握る。
世界的な「脱炭素」の流れを見据え、台湾政府は野心的な目標を掲げている。電力供給における再生可能エネルギーの割合を、2019年の6%から2025年までに20%に引き上げるというものだ。そのためには再生可能エネルギーによる発電能力を27ギガワット増やさねばならない。エネルギー転換は「5プラス2」計画の柱の1つでもある。
目標達成には多額の資金が必要だが、台湾の技術的な優位のおかげで、エネルギー部門でも外資の大量流入が期待できる。アジアは風力発電の世界最大の市場となると予想されているが、台湾は既に欧州企業と提携して沖合の風力発電施設の建設を進め、この分野において地域のトップを走っている。
風力発電関連では、台湾には317億ドルの外資が新規に流入すると見込まれている。太陽光発電では、2019年にグーグルが複数の台湾企業と契約を結び、台湾中部の彰化県にあるデータセンターに電力を供給するため、養殖場にソーラーパネルを並べた発電施設を建設する計画が進んでいる。
好機を生かせ
とはいえ、ただ規模を拡大し、既存の技術を利用するだけでは、壮大な目標は達成できない。課題は、再生可能エネルギーの発電コストを下げること、また風力や太陽光では継続的な発電ができないため、電力網の再整備や蓄電技術の開発も急がれる。電力に大きく依存した技術立国を掲げる台湾にとって、これらは焦眉の課題だ。
これらは、台湾に限らず、再生可能エネルギー利用を推進する上では、どの国にとっても重要な課題だ。開発が待たれる新技術は数々ある。余剰電力を蓄えておける次世代型バッテリー、新たな電力網に対応したスマートメーター、再生可能な天然ガス、廃棄されたソーラーパネルやバッテリーの再生利用、炭素の回収・貯留などなど。こうした技術はまだ試験的な段階で、有力な市場プレーヤーは現れていない。いち早く開発にこぎつければ、どんな小国でも主導権を握れる可能性がある。
今はまさに、あらゆる産業で劇的なパラダイム転換が起きようとしている。なかでも公衆衛生とエネルギーの2分野では、台湾は技術的優位を生かし、戦略的な投資を行うことで、破壊的なイノベーションをもたらせる。ブレることなく、こうした重要分野におけるスペシャリストを目指せば、新しいニッチ市場を確保し、世界経済おける確固たる地歩を築いて、今後数十年、着実に成長の道を歩めるだろう。
COVID-19対応で、台湾は数少ない成功例を提示できた。コロナ危機が台湾の技術的な強みを浮き彫りにしたとも言える。このチャンスを無駄にしてはならない。
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