インドネシア、IS忠誠組織がテロ 警察官刺殺、容疑者もその場で射殺
襲撃された地元警察の警察車両が炎上している。KOMPASTV / YouTube
<新型コロナと断食月による混乱に乗じてテロ組織の活動が活発化するか──>
インドネシアのカリマンタン島で6月1日に警察官1人が刃物で刺殺される事件が起き、容疑者はその場で他の警察官に射殺された。容疑者の遺留品に中東のテロ組織「イスラム国(IS)」の旗に酷似した旗や同志に宛てたメモ、イスラム教の聖典「コーラン」などが残されていたことから、警察ではISと関連があるインドネシアのテロ組織が関与した可能性が高いテロ事件として本格的な捜査を始めた。
マレーシアと国境を接するカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)の南ダハ郡にある地元警察の分駐所で、1日午前2時15分ごろ、近くに駐車していた警察車両が放火されて爆発する事件が起きた。
現地からの報道や警察発表などによると、当直で分駐所にいた警察官レオナルド・ラティパプア氏が爆発音に気づいて外に出たところ、正体不明の男から日本刀のような刃渡りの長い刃物で切り付けられた。
さらに男は分駐所に侵入して立て籠もろうとしたが、別の当直の警察官2人が駆けつけ、うち1人が男に発砲。警察官を切りつけた男はその場で射殺されたという。レオナルド警察官は近くの病院に急搬送されたがそこで死亡が確認されたという。
書置きメモでジハード呼びかけ
男はその後の調べで付近に住むアブドゥル・ラフマン(19)容疑者と判明した。所持していた遺留品にはISがよく使用する黒字にアラビア語で文字が書かれたISの旗に酷似した旗、コーラン、日本刀の様な刃物、そして書置きのようなメモがあったという。
地元メディアなどによるとメモには「警察と戦うために行動を起こした。全ての兄弟よ目覚めよ、そして賢くなれ、ジハード(聖戦)は決して終わることがない」という趣旨のことが記されていたという。
こうした遺留品などから州警察などではISに忠誠を尽くすインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」と関係があるテロ事件とみて国家警察対テロ特殊部隊の「デンスス88」を現地に急派。アブドゥル・ラフマン容疑者の周辺や背後関係の捜査を現在進めている。
一部外国メディアはISに関係する組織が今回の警察官刺殺テロに関する「犯行声明」を出したと報じているが、警察当局は現時点ではいかなる組織の犯行声明も確認していないとしている。
JIDはMITと並び最も危険なテロ組織
今回の警察官襲撃で関与が疑われているJIDは2014年ごろに設立された親ISのインドネシアのテロ組織。2018年5月に第2の都市である東ジャワ州の州都スラバヤのキリスト教会連続自爆テロ、2019年10月には当時のウイラント調整相の刺傷テロ、同年11月のスマトラ島メダンにある警察本部内での自爆テロなど数々のテロ事件を実行している。
スラウェシ島を主な拠点とするテロ組織「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」と並んで、現在インドネシアで最も危険なテロ組織として治安当局の主要摘発ターゲットとなっている。