アングル:日本企業、中国ヘッジ裏目に 高い東南アのトランプ関税

4月7日、トランプ米大統領の相互関税は特に東南アジア諸国への税率が高く、中国依存リスクをヘッジするためベトナムやタイへ生産を分散してきた日本企業を直撃する。写真は東京湾で3日撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Kentaro Okasaka Ritsuko Shimizu
[東京 7日 ロイター] - トランプ米大統領の相互関税は特に東南アジア諸国への税率が高く、中国依存リスクをヘッジするためベトナムやタイへ生産を分散してきた日本企業を直撃する。米国へ輸出する限り、どこでつくろうと追加のコストが発生するため、供給網の組み替えも難しい状況に直面している。
トランプ大統領が相互関税を発表した3日、東京株式市場で日経平均が全面安となる中でアシックスの下げはきつかった。ランニングシューズや高級ブランドのオニツカタイガーなどの販売が好調な同社は2024年12月期に売上高、利益ともに過去最高を更新し、株価は決算発表の翌営業日2月17日に上場来高値まで上昇。その後も堅調に推移していた。
アシックスはシューズの9割弱をベトナム、インドネシア、カンボジアで生産する。24年12月期に連結売上高の2割を占めた北米へも3カ国から輸出していることから、トランプ大統領の発表を投資家は嫌気した。ベトナムは9日から対米輸出に46%、インドネシアは32%、カンボジアは49%の高い関税がかかる。
世界的に自由貿易が進む中で日本企業は中国を主要な生産拠点としてきたが、先鋭化する米中対立や同国経済の落ち込み、新型コロナウイルスの流行などが原因で2010年代後半から供給網の見直しを迫られた。アシックスは中国からベトナムをはじめとするほかの地域へ生産移管をした。今も中国に工場があるが、現地向けの製品を生産している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)がアジア・オセアニア地域の日系企業に実施した調査によると、19ー24年に東南アジア諸国連合(ASEAN)に拠点を置く2633社中、18%が他国・地域からの移管で工場を拡張したり生産ラインを新規に導入、生産品目を拡大したりしたと回答した。人手不足などを理由に日本からが289社、米中貿易摩擦などを理由に中国からは176社だった。
ASEANの日系企業のうち46.4%が日本へ輸出しており、対米輸出は5%にすぎないが、「ASEANで部品などをつくるメーカーの完成品は最終的にアメリカに輸出されるケースもあり、5パーセント以上の影響があるとみている」と、ジェトロ調査部アジア大洋州課の庄浩充・課長代理は言う。
事務機を手がけるリコーと京セラは、第1次トランプ政権時の2018ー19年に生産体制を組み替えた。同政権が中国に課した関税の対象品目に複合機などが含まれたことが一因で、リコーは米国向け生産の一部を中国からタイへ、日本と欧州向けの生産をタイから中国へ移した。京セラはベトナムへ移管し、中国では主に現地向けの事務機をつくることにした。
リコーはさらに、昨年11月の大統領選で勝利したトランプ氏が対中関税を引き上げることを見越し、タイへの移転を一段と進めた。しかし、トランプ氏はそのタイに36%の相互関税を導入する。
リコーは24年3月期、米州の売上高が全体の28.1%を占めた。京セラは米国が22.1%だった。両社とも、現時点で供給網を再び見直すことは検討していない。リコーはロイターの取材に「さまざまなリスクを勘案して投資を考えないといけない」、京セラは「状況を注視している」とコメントした。
任天堂は4日、新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」の米国での予約開始日を変更することを明らかにした。関税の影響を精査するためとし、当初予定の9日から遅らせる。
24年3月期の米大陸向け売上高が全体の44%だった任天堂は、現行機の初代スイッチを中国の委託先で生産していた。安定して大量に生産し、供給するため、今はベトナムやマレーシアなどの委託先にも分散しているが、ベトナムだけでなくマレーシアには日本と同じ24%の税率がかかる。
「今すぐASEANから他の国に生産移管するのは、設備の移管が伴うのでそう簡単にはできない」と、ジェトロの庄課長代理は言う。一方で、「関税がプラスされると影響は非常に大きいので、サプライチェーンを見直す1つの重要なポイントにはなる」と語る。
相互関税は5日に一部が始まった。まずはすべての対米輸出品に一律10%の関税がかかる。9日からは東南アジア諸国や日本、インド、欧州連合(EU)など国・地域ごとにトランプ政権が決めた関税が発効する。世界で事業を展開する日本企業は自国にかかる24%だけでなく、特に生産拠点が多い東南アジア諸国にかかる対米輸出関税も負担となる。
一方、日本を含め各国はトランプ政権との交渉を模索しており、ベトナムのラム国家主席は4日、トランプ大統領と電話会談し、関税措置撤廃に向けた協議を行うことで合意した。9日からベトナムへの関税46%が実際に導入されるのか、なお不透明だ。
トランプ大統領が関税を発表して以降、日経平均は大幅に下落し、7日の下げ幅は一時3000円に迫った。1年半ぶりに3万1000円を割り込んだ。
「トランプ大統領が掲げた指定国の半数がアジア・インドで、米市場をターゲットとしてアジアに進出した日本企業にとって極めて厳しい状況。アジアからの対米輸出という観点でも日本企業への影響は大きいだろう」と、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは話す。
(岡坂健太郎、清水律子 編集:久保信博)
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