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WHO演説で習近平が誓ったコロナ後の「失地回復」

Decoding Xi Jinping’s Speech

2020年5月27日(水)19時40分
バレリー・ニケ(仏戦略研究財団アジア研究主任)

それに対するフォローの意味もあるのかもしれない。習は演説で、G20の一員として途上国の債務返済猶予に応じるとともに、向こう2年間で20億ドルの支援を行うと約束した(実は中国は当初、G20の債務猶予には、一帯一路構想で貸し付けた莫大な金額は含めないよう画策していた)。

「ローカル化」への不安

習の演説は聞こえのいい提案に満ちていたが、むしろ今回のパンデミックで中国が受けたダメージがいかに大きかったかを浮き彫りにした。また、国内では通用してきたかもしれない情報操作や圧力政治を、世界の舞台でも実践しようとしたことで、国際社会の一員としてふさわしくないのではという懐疑論を再燃させる結果にもなった。

かねて以前のような経済成長が見込めなくなっていた中国だが、今回のパンデミックで各国が生産拠点のローカル化を進めるリスクにも直面している。だから習はWHOの場で、「世界のサプライチェーンの安定を維持し、世界経済の回復に尽力する」と訴えたのかもしれない。

無理もない。中国の体制にとって、それはまさに生命線なのだから。

From thediplomat.com

<本誌2020年6月2日号掲載>

【参考記事】新型コロナで窮地の習近平を救った「怪我の功名」
【参考記事】米中どちらに軍配?WHO総会で習近平スピーチ、トランプ警告書簡

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