最新記事

新型コロナウイルス

SNSで「医療関係者は国の英雄」盛り上がるインドネシア 背景に犠牲者55人という苛酷な現実

2020年5月31日(日)18時21分
大塚智彦(PanAsiaNews)

「あなた方は英雄だ」

YouTubeにはインドネシアの歌手や一般の人が歌う「ほかの人のために尽くすあなたへ」
「医療関係者への感謝を込めた歌、ありがとう」「医療関係者への歌」などの動画と歌が溢れており、最も視聴された動画は235万回を記録している。

最も視聴されている動画は「他の人のために」というタイトルで「誰もいなくなった病院に残り働くあなた、みんなが寝ている時も起きて自分の体や健康を気遣うより人のことを心配するあなた。あなたたちは世界の英雄であり神もそれを知っている」などという歌詞が続く。画面には防護服、マスク、防護メガネ、手袋という完全防護姿のまま廊下で横になって休んだり、イスラム教の祈りを捧げたりする写真が多く掲載されている。

画面では手にした紙に「皆さんはどうか家にいてほしい、それが私たちを助けることになる」と政府が訴えている外出自粛、自宅待機をお願いするシーンもある。

こうした動画の拡散から医療関係者への尊敬と感謝がインドネシアでは急速に高まっているのだ。

「多様性の中の統一」「寛容性」など最近は「不完全である」「建て前に過ぎない」などと負のイメージで使われることの多いインドネシアの国是が新型コロナウイルスという未曾有の国民共通の困難に直面してようやくその「本領発揮」となったようだ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染15人 2桁台で3日連続増加
・ブラジルのコロナ無策は高齢者減らしのため?
・韓国、新型コロナ新規感染者は79人 4月5日以来最多、ネット通販の物流センターで感染拡大
・経済再開が早過ぎた?パーティーに湧くアメリカ


20200602issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中