SNSで「医療関係者は国の英雄」盛り上がるインドネシア 背景に犠牲者55人という苛酷な現実
「あなた方は英雄だ」
YouTubeにはインドネシアの歌手や一般の人が歌う「ほかの人のために尽くすあなたへ」
「医療関係者への感謝を込めた歌、ありがとう」「医療関係者への歌」などの動画と歌が溢れており、最も視聴された動画は235万回を記録している。
最も視聴されている動画は「他の人のために」というタイトルで「誰もいなくなった病院に残り働くあなた、みんなが寝ている時も起きて自分の体や健康を気遣うより人のことを心配するあなた。あなたたちは世界の英雄であり神もそれを知っている」などという歌詞が続く。画面には防護服、マスク、防護メガネ、手袋という完全防護姿のまま廊下で横になって休んだり、イスラム教の祈りを捧げたりする写真が多く掲載されている。
画面では手にした紙に「皆さんはどうか家にいてほしい、それが私たちを助けることになる」と政府が訴えている外出自粛、自宅待機をお願いするシーンもある。
こうした動画の拡散から医療関係者への尊敬と感謝がインドネシアでは急速に高まっているのだ。
「多様性の中の統一」「寛容性」など最近は「不完全である」「建て前に過ぎない」などと負のイメージで使われることの多いインドネシアの国是が新型コロナウイルスという未曾有の国民共通の困難に直面してようやくその「本領発揮」となったようだ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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