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新型コロナウイルス

SNSで「医療関係者は国の英雄」盛り上がるインドネシア 背景に犠牲者55人という苛酷な現実

2020年5月31日(日)18時21分
大塚智彦(PanAsiaNews)

東南アジアで新型コロナの死者が一番多いインドネシア、医療スタッフも常に危険と隣り合わせだ。REUTERS/Willy Kurniawan

<新型コロナウイルスへの認識させた医療従事者の死>

インドネシアでは新型コロナウイルスの感染拡大が未だに増加しており、ジョコ・ウィドド大統領はじめ政府、地方自治体が一丸となって国民に感染拡大防止を呼びかけているが、罰則を強化したり制限を拡大したりしても規制にこだわらない国民性のゆえにかあまり実効性を伴わず、ルール無視や規制かいくぐりが毎日のニュースを賑わせている。

そんななか、「You Tube」などのネット上では医師や看護師、保健所勤務者、病院の警備員など新型コロナ対策に携わる医療関係を中心としたスタッフへの尊敬と感謝を表す動画、メッセージが溢れている。共通の言葉は「ありがとう、自らを省みない献身を続けるあなたたちは世界の英雄だ」である。

日本でも29日昼過ぎには航空自衛隊のブルーインパルスが東京上空を編隊飛行して医療従事者への感謝を示したが、インドネシアでも医療関係者への関心が高まっている。その理由の一つに院内感染による医師や看護師の死者が増えているという厳しい現実がある。

伝統的な社会規範が感染広げる?

イスラム教徒が圧倒的多数を占めるインドネシアではイスラム教優先や男尊女卑的な伝統的社会規範の中に突然沸き起こった新型コロナウイルス禍が当初は混乱を巻き起こした。

「感染はイスラムの神が与えた試練である」「熱心に祈れば感染しない」などの風説に「密閉空間、密集場所、密接場面」といういわゆる3密を避けることやマスク着用なども不要とする傾向が強かったが、3月2日にインドネシア国内で初のインドネシア人感染者が報告された。

そしてその後は感染者数、感染死者がうなぎ上りに急増するに至り、感染予防の必要性、重要性がまたたくまに国民の間に拡散した。市場ではマスク、消毒用アルコールなどが高価になり、そして品切れとなって消えたのもこのころである。

感染に対する警戒心が一方では異様なまでの恐怖心に膨れ上がり、ジャカルタでは感染死者を埋葬する指定公共墓地の周辺住民などが「死体からの感染」を危惧して霊柩車を妨害したり、埋葬する作業員の仕事を妨害したりするケースが多発し、結果として警察官が指定墓地に派遣されて警備と警戒にあたる事態に発展した。

こうしたなか、ジョコ・ウィドド大統領は「勉強も、仕事も、祈りも自宅で」として学校の閉鎖、主要不可欠産業・業務以外の原則停止や短縮、モスクや公共の場所などでの集団礼拝の自粛を呼びかけた。

規制強化のため3月20日には緊急対応宣言、4月10日には実質的な「ロックダウン(都市封鎖)」に匹敵する大規模社会制限(PSBB)をジャカルタなどに発令して感染防止に全力を挙げた。5月28日現在このPSBBは依然として4州、23の県と市で実施されている。

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